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『道浦TIME』

新・読書日記 2010_160

『ギャンブル依存とたたかう』(箒木蓬生、新潮選書:2010、7、20第1刷・2010、7、31第3刷)

 

大相撲の野球賭博問題を機に、なぜギャンブルに「はまる」のかを考えるきっかけとして読んだ。「ギャンブル依存」が病気だとすると、「倫理」だけで防げるものではない。そこまで考えた対応を取らないといけないのではないか。特別調査委員会や協会側に、そういった視点はあるのだろうか。

また、ことは「相撲協会」に限ったことではない。やはり日本固有のギャンブル文化である「パチンコ」の問題も、その功罪を含めて検討しなくてはいけないのではないだろうか?若い両親がパチンコに熱中し、駐車場の車の中に幼い子どもを置き去りにして死亡させてしまうという事件が頻発し、そのたびに責められるのは当然「親」だが、責任の所在とは別に、こういったいたましい事件を防ぐ根本的な手立てを考えなくてはいけないのではないだろうか。テレビ局もパチンコ(の台)のコマーシャルを流しているという意味では同罪なのではあるが、「程度問題」だと思う。国家予算の3分の1にもあたる「30兆円業界」なのに、「ギャンブル依存」を「病気」という観点から防いでいく視点は、まだないのではないかと思った。

そして、「ギャンブル依存」と「薬物依存」。相撲界と芸能界。ある種、特別な閉じられた世界。何かに「依存する」という、「依存せずにはいられない事情」が何かあるのか?「アルコール依存」もそうだが・・・。イスラム国では、アルコールもギャンブルも禁じている。人間の根本・本能には、何かに依存せずにはいられないものがあるのか?エンドルフィンの分泌を促す要因を持つものが?ギャンブル・薬物・アルコールなどは、「エデンの園」の「リンゴの実」なのか?それとも、生存するのに精一杯の時には、依存は表れない?そんなことはない。精一杯だからこそ縋(すが)る。宗教などにも。宗教も含め、「自我の確立と依存」には、密接な関係があるのではないか?そんなことを考えた。

読み物としては、やや理屈っぽすぎておもしろくないが、実際の医療現場からの実態報告としては、これほどリアルな現場報告・提言はない。貴重な一冊が、新潮選書でたったの1000円ポッキリというのは、めっちゃ安い!

 

 


star4

(2010、8、31読了)

2010年9月 2日 21:57 | コメント (0)