新・ことば事情
4128「孫娘」
東京・足立区で、戸籍上は生きているはずの「111歳」の男性が死亡していた問題で、その男性の年金を詐取した疑いで、警視庁は男性の長女と孫娘を逮捕する方針を固めたと、8月27日のテレビニュースで報じていました。その際に使われた、
「孫娘」
という言葉に関して、報道のNさんが疑問を投げかけました。
「『孫娘』とは言うけど、『孫息子』とは言わんなあ」
たしかに。辞書(『広辞苑』『明鏡国語辞典』『精選版日本国語大辞典)を引いていても、「孫娘」は載っていますが「孫息子」は載っていません。
なんでだろう?と考えました。
やはり、こうではないでしょうか?
「昔の家族制度(家系)の下では『孫』と言えばすなわち『男』であり、その例外である孫に関して、新しい言葉が作られた。それが『孫娘』ではないか?」
たとえば、男性がするに決まっている(と社会的に認知されている)職業に関して、もし女性がやっていたら、その職業名に「女」を付けて、
「女弁護士」「女社長」「女医」「女教師」「婦人警官」「女店員」
のように呼んできた経緯があります。「孫娘」は、それと同じなのではないかなあと思います。これまでが「男性社会」であったこと、そして性別と社会における役割、仕事の変化と言うものを感じます。「孫」というのも「社会的役割」を持たされたものだったのかもしれませんね。
その意味では「女性」が社会的に力をつけてきた昨今、これまでだったら単に、
「草食系」
としか呼ばなかった"であろう"ものを、
「草食系男子」
と「男子」を付けたこと(命名者はおそらく女性でしょう)や、自分たちのことを指して(年齢は度外視して)、
「女子飲み」「女子会」「女子力」
など自ら「女子」と名乗る動きは、「男女同権」を通り越して「女性優位」の社会への変化を示しているのかもしれません。Google検索(8月27日)では、
「孫娘」 =214万0000件
「孫息子」= 5万9800件
でした。ネット上では既に『孫息子』使われています。また辞書では、新しい言葉を早く採用することで知られる『三省堂国語辞典』(第6版)が、「孫娘」と並んで「孫息子」を見出しで採用していました。
「孫息子」=孫に当たる、男の子。