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『道浦TIME』

新・ことば事情

4125「膝下」

茨木のり子さんの詩集『対話』から「魂」という詩を読んでいたら、こんな一節が。

「あなたの膝下にひざまずく」

ここで出てきた、

「膝下(しっか)」

という言葉を見て、ハタと膝を打ち叫びました。

「そういうプロトコル(儀礼)か!」

ご説明しましょう。

手紙などに書くお決まりの言葉の中に、

「膝下(しっか)」

「机下(きか)」

といった言葉があります。最近はあまり使われないでしょうから(手紙も書かないし)目にする機会も減りましたし、子どもは使わない「大人の書き言葉」です。

私も言葉としては知っていますが、ほとんど使ったことはありません。せいぜい、

「前略・・・草々」「拝啓・・・敬具」

ぐらいです、使うのは。

その「膝下」は、茨木さんがこの詩で使ったように、

「あなたの膝の下にひざまずきます=従います」

ということを示しているのだと気付いたのです。

それは「握手」が、

「私は武器を持っていませんよ=あなたと戦う意思はありません」

という態度表明の「儀礼」であるのと同じです。手紙に「膝下」と書くのも、それと同じなのだなと、言葉の元の意味に触れて感じたと、そういうわけです。

「平成ことば事情278実家」でも、ちょっとだけ「膝下」に触れていますので、ぜひお読み下さい。

 

(2010、8、25)

2010年8月26日 21:30 | コメント (0)