新・ことば事情
4125「膝下」
茨木のり子さんの詩集『対話』から「魂」という詩を読んでいたら、こんな一節が。
「あなたの膝下にひざまずく」
ここで出てきた、
「膝下(しっか)」
という言葉を見て、ハタと膝を打ち叫びました。
「そういうプロトコル(儀礼)か!」
ご説明しましょう。
手紙などに書くお決まりの言葉の中に、
「膝下(しっか)」
「机下(きか)」
といった言葉があります。最近はあまり使われないでしょうから(手紙も書かないし)目にする機会も減りましたし、子どもは使わない「大人の書き言葉」です。
私も言葉としては知っていますが、ほとんど使ったことはありません。せいぜい、
「前略・・・草々」「拝啓・・・敬具」
ぐらいです、使うのは。
その「膝下」は、茨木さんがこの詩で使ったように、
「あなたの膝の下にひざまずきます=従います」
ということを示しているのだと気付いたのです。
それは「握手」が、
「私は武器を持っていませんよ=あなたと戦う意思はありません」
という態度表明の「儀礼」であるのと同じです。手紙に「膝下」と書くのも、それと同じなのだなと、言葉の元の意味に触れて感じたと、そういうわけです。
「平成ことば事情278実家」でも、ちょっとだけ「膝下」に触れていますので、ぜひお読み下さい。