新・ことば事情
4122「しびれる試合」
2010年8月22日、巨人・朝井秀樹投手が、阪神戦後のインタビューで、
「これからもしびれる試合が続くと思いますが」
と言いました。朝井投手は今年7月28日に交換トレードで「東北楽天」から移籍してきたばかりの投手です。1984年1月1日生まれの26歳、大阪・PL学園高校出身。
このコメントの中の、
「しびれる試合」
の「しびれる」は、
「緊張感のある、緊迫した、息詰まる」
の意味だと思いますが、割と新しい言葉の使い方ではないでしょうか?
少し古い、グループサウンズ世代・・・と言いますから40年ぐらい前に、主に女性の若者言葉として使われた、
「しびれる」「シビレル」
の場合は、
「カッコイイ」「惚れちゃう」「素敵」
というような意味合いでの「しびれる」でしたが、今、スポーツ選手がよく口にする「しびれる」は、意味が違ってきています。
「緊張して手や体が硬直・麻痺するような、そういった緊迫感のある状態」
を指して「しびれる」なのだと思います。プレーヤー(選手)としての言葉です。
もちろん、そういった試合を見た観客は手に汗を握って、
「シビレルー!」
と口にするかもしれませんが、その「シビレル」とは、ちょっとニュアンスが違うように思うのです。
『精選版日本国語大辞典』で「しびれる」を引くと、
「(1)体の全体または一部の感覚がなくなり、運動の自由がきかなくなる。(2)正常な思考能力や感情、気力が麻痺する。激しく感情が高まって酔ったようになる。」
とあります。巨人・朝井投手の「しびれる試合」というのは文字通り(1)の意味もあり、また(2)とは逆に「気力が高まりすぎて麻痺する」状態なのじゃないかなあ。グループサウンズのファンは(2)だと思います。
『日本俗語大辞典』(
「音楽などの強い刺激を受けて非常に興奮する。魅力にとりつかれてうっとりとする。1958年の三橋美智也の節回しに酔いしれる時に「しびれる」と言って、はやった。またグループサウンズがはやった1960年代にもよく使用された。「いかす」と同義。◇『東京新聞』(1962年6月14日朝刊)「『かっこいい』『しびれる』のたぐいはみんな楽隊が作った言葉である」(見坊豪紀『<60年代>言葉のくずかご』から)
グループサウンズよりも前に「三橋美智也」さんがきっかけ、しかも「1958年」と、年代までハッキリしている言葉なのですね、「しびれる」は。そして、明らかに最近のスポーツ選手が言う「しびれる」は、これとはちょっと違う意味で使われていますね。
Google検索(8月25日)では、
「しびれる試合」=5万5400件
でした。
コメント
道浦さんこんにちは。しびれるイコール緊張するよくわかりました。僕は阪神寄りで野球を見ますから(中立の場合もあります。パリーグは試合によります)これからが緊張しますね。では失礼します。
投稿者: 小原正裕 日時:2010年08月29日(日) at 20:20
「しびれる様な命令ありがとうございます」(だったかな)
『踊る大捜査線』の中で、青島刑事が室井管理官に言った言葉。
この時の「しびれる」という使い方が、ずっと頭にひっかかっていたのを、
久しぶりに思い出しました。
投稿者: yosi-q 日時:2010年09月07日(火) at 17:54