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『道浦TIME』

新・ことば事情

4119「カリスマ主婦モデル」

「カリスマ主婦モデル」ショーケン(萩原健一)と交際?というニュースが流れたのは8月19日。この「カリスマ主婦モデル」の人は、既に「離婚」していたのだそうです。そこで疑問。

「離婚したら、既に『主婦』ではないのではないか?そして『カリスマ』は『主婦』の形容詞だから、本体の『主婦』でなくなったら、『カリスマ』でもなくなるのではないか?つまり肩書は『モデル』だけではないか?さらに言うなら、それでも『カリスマ主婦』ということが必要ならば、『元』を付けるべきではないか?」

というものです。

これを聞いたある30代の女性は、

「(現在)結婚してないシングルマザーでも、家事など『主婦業』をしていたら、『主婦』なんじゃないですか?結婚していないと『主婦』じゃないんですか?」

と反論。

うっ・・・僕は、

「結婚していなければ『主婦』とは名乗れない」

と思うけど、この女性の主張したいところは分かります。「主婦」は、

(1)結婚している女性の肩書・地位。

(2)(現在結婚しているかどうかは別にして)いわゆる「主婦業」にあたる仕事を行っている人の呼称。

と考えた場合の(2)も主婦だ、ということですね。

40代半ばの男性の後輩のS君に聞いたところ、

「主婦の本来の意味としては、『結婚した女性』のことですよね。で、ことさら、『専業主婦』なんて言うように、『家事を切り盛りする女性』という意味合いを込めていますよね。ただ、『主夫』が登場したり、『シングルマザー』が一般的に認知されるようになると、『シュフ』というのは、主に家事をする男女のことであって、いま現在において結婚しているかどうか、その経歴があるかどうかは、必要十分条件ではないのかもしれませんね。ま、私は保守的思考なのかもしれませんが、道浦さんが指摘された伝統的な使い方に賛成ですが。」

そうだよな。普通、そう考えるよな。(何が「普通」か分かりませんが)

「主婦」を辞書で引くと、

☆『広辞苑』=(1)一家の主人の妻。(2)一家をきりもりしている夫人。女あるじ。

●『明鏡国語辞典』(妻であり)一家の家事を中心になって行っている女性。◎近年、同様の役割を果たす夫を、これをもじって「主夫」ということがある。

☆『精選版日本国語大辞典』=一家の主人の妻。また、一家の主人である女性。女主人。

★『新明解国語辞典』=その一家の中で、家族の世話をし、家事を取り仕切る立場にあるとされる女性。(多く、「主人の妻」がその役を負う」

☆『三省堂国語辞典』=つまであって、家庭の仕事の中心となる人。

★『岩波国語辞典』=一家の主人の妻で、家事をきりもりする人。◎例えば、主婦の死後に娘が家政を受け持っている場合などにも、言うようになった。

    『新潮現代国語辞典』=一家の主人の妻。一家の中心として、家庭をきりまわす婦人。

☆『デジタル大辞林』=一家の家事の切り盛りをする女性。

※「主夫」が見出しで載っている辞書=☆

「主夫」が見出しで載っていない辞書=★

「主夫」が見出しには無いが、本文で触れている辞書=●

 

この中の『精選版日本国語大辞典』で、「主婦」の「語誌」を見てみました。

(1)   明治時代には、中流家庭あるいは商家や下宿で、家政の采配を振るう立場にある女性をいった。この場合、必ずしも自身が家事労働に携わるわけではなかった。

(2)   大正時代になると、サラリーマン家庭が増加し、その妻たちの多くはもっぱら家庭内で家事労働を担当した。後に「主婦」といえば、特にこのような家事に専従する既婚女性を指すようになる。しかし、1970年代以降、この層でも仕事を持つ者が増え、そのため、家事専従の主婦を指して、新たに「専業主婦」という言い方が生まれた。

とありました。そうなんです「専業主婦」があるということは「兼業主婦」、つまり、

「社会(=家庭外)で働きながら、主婦業をこなす人」

が出てくるのです。その「主婦業」というのは、「家事」であり、「家事」というのは、

「家庭内の仕事」

ですから、

「『家庭』がなければ、『主婦(業)』は存在し得ない」

ということです。さて、「家庭」とはなんでしょうか?『精選版日本国語大辞典』では、

「(2)夫婦、親子を中心にした血縁者の生活する最も小さな社会集団。また、その生活の場所」

やはり、まず書かれているのは「夫婦」ですね。次に「親子」。そうすると、離婚しても、(あるいは夫と死別しても)、

「子どもと住んでいる」

あるいは

「親と住んでいる」

場合には、「主婦」は存在しうるということでしょうか。

「カリスマ主婦モデル」さんは、「夫」は離婚で失ったわけですが、あとは「子どもがいるかどうか」がポイントになりそうですね。

でも、本当に「主婦のプロ」のような人は、テレビなどにのこのこ出て来なさそうな気がします。出てきてそれが「仕事」になると、本来の仕事である「主婦(業)」が出来ないのではないか?「主婦」というからには「主」に「家庭内の仕事」を「全力で」やる職業なのではないか?そうすると、今回の人の「カリスマ主婦」というのは、正確には、

「カリスマ"兼業"主婦」

ということか?うーん、「主婦」も難しいなあ。

(2010、8、25)

2010年8月25日 18:24 | コメント (0)