新・読書日記 2010_155
『街場のメディア論』(内田樹、光文社新書:2010、8、20)
著者の内田さんは、この「街場」という言葉を使った本を何冊もいろんな出版社から出している。(まえがきによると本書は「街場」シリーズ4冊目だそうです。これまでは「アメリカ論」「中国論」「教育論」だったようです。)これが彼のキーワードのようだが、同じく江弘樹さんという著者の友人(だんじりの人)もこの「街場」をキーワードに使っている。が、読んでもみても、何が「街場」なのかはよくわかりません。全部の「街場」本を読んでいないからかもしれませんが。単に「内田本」の目印か?
で、あまり「内田本」は好きではないと前にも書きましたが、何冊か読んだ「内田本」の中では、これはとっつきやすい。勉強になる一冊だと思いました。神戸女学院大学での授業がベース。こんなレベルの高い授業をやっていて、大学生はついてきているのかな?
「メディアと『クレーマー』」「『正義』の暴走」あたりのメディア論は、概ね「なるほど」と納得のいくものでした。また「本」の未来についても、
「なるほど、『読者』は『消費者』とイコールではないのか」
と一応の納得。理想としてはそうだけど、今はそうなっていない(読者は消費者である、というケースが多い)から、こんな問題が起きているのだろうとは思いましたが。
「書棚の効果」のところは面白かったが、
「電子書籍について論じるときに、誰ひとり『書棚の意味』について言及しないことです。少なくとも僕は『書棚』と電子書籍のかかわりについて書かれたものを読んだ記憶がありません。」
というような断定的な書き方をしているのは、しらけた。そんなことを"断定的に"言えるのはなぜだろう?自分に相当自信があるのだろうな。このあたりの書き方が、私は「好きではない」という原因のように思います。