新・ことば事情
4108「チン」
「平成ことば事情4107」で書いたように、鶴見俊輔の『思い出袋』(岩波新書)という本を読んでいたら
「袖珍」
という言葉が出てきました。「しゅうちん」と読みますね。その意味を調べていて、
「珍」
を『広辞苑』で引いたときに、横にあったカタカナの、
「チン」
に目が゙止まりました。2種類の「チン」があったのです。2種類というか「2か国語」でしょうか。
「朝鮮語」では、「韓国のゴング、鉦」。
そして、
「タイ語」では、「タイの小型シンバル」
と書かれていたのです。
つまり、「擬音語」が「東アジアでは同じ」ということなのでしょうか?
そもそも「シンバル」の語源は?「シン=チン」なのかな?
と思って『広辞苑』で、「シンバル(cymbal)」を引くと、
「打楽器。東洋の鈸(はち)をヨーロッパで採用したもの。凹面の金属円盤を打ち合わせ、またはスティックで叩いて音を出す。」
とあるではないですか。「シンバル」は、「東洋」(=アジア)から「ヨーロッパ」に行ったのか!では、アジアの「擬音語」が、そのネーミングの元かもしれない!
「鈸(はち)」を引くと、
「(バチとも)シンバル状の二枚一組の体鳴楽器。仏具の一種で、法要の際に鐃(にょう)と組み合わせて用いられる。鉢。→にょうはち。 」
とあり、「鐃(にょう)」を引くと、
「①広義には、中国・朝鮮・日本の青銅打楽器の総称。鉦(しょう)・銅鑼・鈴・鈸(はち)のあらゆる種類を指していう。②狭義には、①の銅鑼の一種。銅製の浅い鍋型で、円周の二点に紐をかけて吊り、桴(ばち)などで打つもの。仏具としてふつう鈸(はち)と組み合わせて用いる。③全長二○センチメートルほどの銅製の柄付きの鈴。法隆寺・東大寺などで法会に用いる。」
「仏具」ということは、天竺=インドが原点かな?
・・・と『広辞苑』を机の上で広げるだけで、ここまで旅することができました。
そしていま、日本語で「チン」は、
「電子レンジで調理する」
という意味になってますけどね。電子レンジはもはや「チン」とは言わずに、
「ピピピッ」
って言うんだけど、我が家では。