新・ことば事情
4095「関西人は母音を大切にする」
「関西人は1拍の語も、母音を伸ばし2拍にする。関東人は歯切れよく1拍で言う。」
ということはよく言われます。具体的には、「目」「手」「歯」を
「目ェー」「手ェー」「歯ァー」
というような関西アクセントの言葉です。関西では「母音の無声化」がないことも影響していると思います。それに関して先日「ハッ!」と気付いたのは、
「2拍になるとアクセントが変わってくる」
ということ。「1拍」だと"あまり"アクセントの違いは気になりにくいのですが、「2拍」だとその辺りが単語単位で明らかになってくる。
具体例を見るために、「1拍(1字)の単語(意味を持つ語)の例を「あ」から挙げてみましょう。
亜、胃、鵜、絵、尾
蚊、木、九、毛、子。
差、詩、酢、背、祖。
田、血、津、手、戸。
名、荷、ぬ?根、野。
歯、日・火、麩(府)、屁、穂。
場、び?、ぶ?、ベ?、ぼ?
間、身、無、目、喪(藻)
矢、●、湯、●、世
等、利、る?、れ?、炉
輪(和)、●、●、●、を?
ということで、ほとんどの音に「1字語」がありました。そして、「1拍」で読む標準語であるならば、アクセントは、
「平板」か「尾高(=頭高)」
の2通りのアクセントしかありません。その区別はこれらの「1字語」の後に助詞の「が」をつけたときに、「が」の前で音が下がれば「尾高(=1字なので「頭高」でもある)」、「1字語」と助詞「が」の間に音の高さの変化がなければ「平板アクセント」となります。
ところが、母音を伸ばして「2拍」にすると、次のようになります。
亜、胃\、鵜、絵/、尾/
蚊、木/、九、毛\、子
差、詩、酢(酢/)、背\、祖。
田/、血、津、手/、戸。
名\、荷、ぬ?根/、野。
歯\、日\・火/、麩(府)、屁/、穂/。
場、美、ぶ?、ベ?、ぼ?
間、身、無、目/、喪(藻)
矢/、●、湯/、●、世
等、利、る?、れ?、炉
輪/(和)、●、●、●、を?
斜線が入っていないものは、「高い音で平板で引っ張るアクセント」です。これを「/」(上昇アクセント)と「\」(下降アクセント)、それに「高い音で平板アクセント」で分類したら、
「/」=絵/、尾/、木/、(酢/)、田/、手/、根/、火/、屁/、穂/、目/、矢/、湯/輪/
「\」=胃\、毛\、背\、名\、歯\、日\
「高い音で平板」=亜、鵜、蚊、九、子、差、詩、酢、祖、血、津、戸、荷、野、麩(府)、場、美、間、身、無、喪(藻)、世、等、利、炉、(和)
といった具合になりました。
助詞の「が」も付けてみると、次のように分類できます。
(1)「胃」、「歯」=「イ\ー・が」、「ハ\ーが」=頭高
(2)「目」、「手」=「メー/・が」、「テー/・が」=平板?尾低?
(3)「喪」、「身」=「モー・が」、「ミー・が」=完全<高>平板?
(4)「湯」、「輪」=「ユー・が」、「ワー・が」=完全<低>平板?
というようなパターンに分けられるのではないかと思います。このうち(2)(3)(4)は、標準語には「ない」アクセントパターンです。つまり1音目と2音目に高さの違いが「ない」のです。
単に母音を伸ばすというだけでなく、アクセントのパターンも複雑になるという面が、関西弁にはあるのではないでしょうか?と思ったのでした。