新・ことば事情
4094「Hの読み方」
「ミヤネ屋」のスタッフのO君から質問を受けました。
「WHOの読み方はどう読めばいいでしょうか?」
「ダブリュー」はよいとして(=「ダブル」ではない)、「H」は「エッチ」か「エイチ」か?ということですね。私は「『エイチ』かな」と思っていたのですが、国語辞典を引いてみると、驚いたことに国語辞典は、
「エッチ派」
なんだったのです!この質問、もちろん会社で受けたのですが、
「ええ!『エッチ』だけか!?」
と大きな声を上げたら、周囲の人(特に女性)に変な目で見られ、釈明に苦労しました。O君と「往生」しました。O嬢の物語。皆さんも気をつけましょう。声を出すのは「TPO」が大事ですね。Oh、ミステイク。
「国語辞典が『エッチ派』」という根拠は、
「『エイチ』は『空(から)見出し』」
で、「エイチ」を引くと、
「エッチを見よ」
という印が付いている。『精選版日本国語大辞典』『三省堂国語辞典』『広辞苑』『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』はそうでした。
『新明解国語辞典』は、「エッチ」の解説の最初に、
「エイチの俗な発音」
と書かれています。
また、『三省堂国語辞典』は、「H」の「エッチ」と、「hentai」の頭文字のHからきた「エッチ」とを「見出しで別項目」にしていて、後者の「エッチ」は「(俗)」というマークをつけた上で、
「(1)性的なことを好むようす。(2)性交。」
と記していました。
『新潮現代国語辞典』は、ちゃんと「エイチ」の項目を立ててきっちりと解説をし、そこに、
「(エッチとも)」
となっていて、「『エッチ』の方が、空見出し」です。「エイチ」の意味は、
(一) 英語のアルファベットの第八字。
(二) (1)【H】水素の元素記号。(2)(hardの略)鉛筆の芯の硬さを表す記号の一。HBの上の硬さ。(3)(hipの略)腰周り。ヒップ。
(三)【h】(1)(hectoの略)ヘクトの記号(2)(hourの略)時間の単位で【時間】の記号。
と、きっちり「エイチ」と発音するものの意味を大文字と小文字に分けて記しています。随分「エイチ」はありますね、略号が。
そして性的な意味の「エッチ」に関しては、見出しがひらがなで「えっち」となっていて、
「(「変態」をローマ字書きしたhentaiの頭文字からか)(俗)卑猥(ヒワイ)」
とあります。今は「卑猥」の意味だけじゃないんだけど・・・。
「今は」という部分に関して『岩波国語辞典・第7版』は(「エイチ」の立項はなく)、「エッチ」の説明に、
「<俗>(1)性的にいやらしいこと。そういう人。特に男。」
というふうに、対象を「男」と強調しています!そ、そうだったのか!また、
「(2)性的行為、特に性交。普通「エッチ」または「H」と書く。「変態」のローマ字書きの頭字Hから。以前女学生の隠語だったのが、1965年ごろ一般化し、80年ごろから(2)の意が広まった」
というように、「具体的な年代」が記されています。これは貴重だ!たしか「十手」が「じゅって」(正しくは「じって」)と間違って言われるようになった年代も具体的に書いていたな、この辞書は。
それにしても私個人は、「エイチ」と読む方が「英語っぽい」感じで、「英知」を感じます。
家にあった『広辞苑・第4版』では、なんと「『エイチ』の見出し」すらなし!「エッチ」のみです。あんたも好きねえ。
あ、それで結局「WHO」は、
「ダブリュー・エイチ・オー」
と「英語らしく」読むことにしました。
コメント
性交を「S●X」と言うより「エッチ」と言う方がいやらしくない感じがするが、これを認知させたのは「明石家さんま」ではないか。ところで私たちの世代で「エッチ」と聞くと最初に思い出すのは浅香唯の『ヤッパシ・・H』という歌だ。歌詞がすごい。「A! A響されて、B! Bン感しちゃう、C! Cらないうちに熱くなる(以下略)」ときて、「愛(I)の手前、ヤッパシ…H!」とつながる「アイウエオ作文」。彼女はこの歌の後『スケバン刑事』になった・・・。
投稿者: yoshi-q 日時:2010年08月04日(水) at 16:23