新・ことば事情
4089「アナウンサーなだけあって」
今年も、6月に2度ほど講義をした神戸女子短大の学生さんたちの、私の授業を受けての感想文が送られてきました。概ね好評で、
「ことばのおもしろさを実感できました」
「声がきれいでびっくりしました」
などという「ウシシ」な内容でした。
そんな感想文の中で、数人が書いていた表現で気になったのが、こういうものでした。
「アナウンサーなだけあって喋りがとても上手いし面白いし、とても慎剣に聞くことができました。」
「アナウンサーなだけあって、声のトーンや話し方のテンポがとても丁寧で聞き取りやすかったし、なぜか落ち着いた気持ちになりました。」
「アナウンサーなだけあって、人をひきつける話し方をするなあと思いました。」
おいおい最初の人、「真剣」の「真」が、「慎重」の「慎」になっているよ。
それはさておき、私が気になったのは、
「アナウンサーなだけあって」
という表現です。
「アナウンサーだけあって」
なら特に気にならないのですが、
「アナウンサーなだけ」
と「な」が入るのはおかしい。「アナウンサーだけあって」なら「アナウンサー」は「名詞」だけど「アナウンサーなだけ」と「な」が付くと、
「『アナウンサーな』という『形容動詞』」
になってしまう。これは、
「問題な日本語」
の「な」と同じ、「問題のある日本語の使い方」ですね。「問題な」だけでなく「アナウンサーな」にまで、コトは進んでいるということを感じて、
「みんな喜んで、一生懸命聞いてくれたのはいいけれど、日本語の進んでいる道は"茨『な』道"だなあ・・・」
と感じたのでした。あそうそう、学生さんの中には、
「さすがアナウンサーだと、感心しました」
という意見もあったことを、付け加えておきます。感心されてしまいました・・・・。