新・ことば事情
4085「食料と食糧」
(古い話で恐縮です。最初につけた番号は「3345」でしたから2年ぐらいほったらかしでした)
2008年イタリアのローマで開催された
「食糧サミット」
この「りょう」の漢字は「糧」でした。
一方同じ2008年8月6日の新聞記事、
「食料自給率が40%に回復」
は、朝日新聞だけが、
「食糧自給率」
という表記で、ほかの新聞は全て、
「食料自給率」
としていました。データを発表する農林水産省は、
「食料自給率」
としているようです。そこで朝日新聞の知り合いに聞いてみたところ、
「本来は『穀物』というか『コメ』の話だったと思われるので『食糧』を使っていたが、農水省が『食料』を使っていることもあり、現在では『朝日新聞用語の手引』の例示はしていない。07年度の記事は『食糧自給率』でいった(農水省の発表は「食料」)。使い分けの基準は新聞協会の用語集とだいたい同じで、
『食べ物全般=食料』
『穀物中心の主食物=食糧』
また朝日では『食糧』に『抽象的概念としての食物』という定義もあることはある。
最近はだいたい『食料』が一般的になっており、『食糧』は『戦後の食糧難』や『かつてあった食糧管理制度』という使い方をするくらいではないかと思う。」
とのことでした。
一方、読売新聞の知り合いに聞いたところ、
「『食糧』と『食料』の使い分けは、『食べ物全般=食料』『穀物中心の主食物=食糧』。ただ、『食料』のメーンとなるものは『穀物』で、『食糧』抜きにして『食料』は考えられない。そこで『食糧』を中心とした『食料』全般を『食糧』で表す場合もあるかと思う。
『ごはんを食べに行こう』『今日のごはんは何かな』
などは、米だけを指しているわけでなく、おかずもすべて含めて言っているのと同じ理屈。そういう意味では、『食糧』の方が"上位概念"であるとも考えることができるのではないだろうか。」
なお、『日テレ放送用語ガイド』では、
「食料」=食べ物全体 <例>食料品(店)、生鮮食料、配給の食料
「食糧」=穀物を中心とした主食物、米・麦など <例>食糧自給、食糧問題、食糧支援、食糧備蓄
と載っていました。『日テレ放送用語ガイド』では、北朝鮮への、
○「食糧支援」 △「食料支援」
のようです。
また、2008年7月8日付の各紙朝刊で、洞爺湖サミット(懐かしい!)の記事が出ていました。その中でサミットでの議題として出てきたのが「しょくりょう問題」で、その表記は各紙バラバラでした。
(読売)食料
(朝日)食糧
(毎日)食糧
(産経)食糧
(日経)食料
でした。
また、2009年2月2日の産経新聞夕刊では、
「食料サミット」
と「食料」が使われていました。