新・ことば事情
4078「あらへん2」
「平成ことば事情4074あらへん」に関して、「京都人」さんから感想・質問を頂きました。
「今回のテーマも興味深く読ませて頂きました。でも、疑問が一つ。大阪弁では『しーへん』と言うんですか?京都というか、私は、『せえへん』か『しーひん』と言っていると思います。『する』は『くる』と同様に、イレギュラーな動詞だからだと思うのですが。この私が使う、『しーひん』の『ひん』は文法的な規則なのか、なまったものか、疑問は尽きません。これからも、オモシロ日本語の解説、楽しみにしています。」
すみません、ご説明が足りませんでした。普通は大阪弁では、
「せえへん」
ですね。「しーひん」「しやへん」が京都弁で、大阪弁と京都弁の融合形が「しーへん」で、ご指摘どおりこれはちょっと例外的なものだと思います。そういう形もあるということで。
またアメリカ在住のI先輩(京都出身)からもメールをいただきました。
『「あらへん」のこと。
ぼくも不思議に思ってました。
そもそも関西弁の「へん」って何なんでしょうか。
「広辞苑」によると「室町時代以降、口語の否定の助動詞としては、三河以東は「ない」、尾張以西は「ぬ(ん)」を用いた(東西方言の大きい相違のひとつ)」とあります。それを踏まえて想像するに、「し・ない」の意味の古語の「せ・ぬ」→「せん」→「へん」になったのではないでしょうか。
名古屋方言ではまだ、「せん」は残ってます。例:「おえりゃーせん」。それが関西ではsen音がhen音に変化した、というのはどうでしょうか。
それにしても、「ある」に「ない」が結合しないのは不思議。
「ある」と同じく、古語ではラ行変格活用の「おる」についても、「おらへん」はいけますが、「おらない」は言いませんね。
それから、標準語の口語では「ある」の否定として「ない」はつきませんが、「あり・ません」はありますね。
話は少し変わりますが、アメリカの高校生に日本語を教えていたときに、
口語で「です」の否定が「ではありません」になるというのを説明するのに苦労しました。
「です」が短いのに、なんでその否定形がそんなに長いんやと思うわけです。
関西弁なら「~とちゃう」でええんですけど・・・。
この疑問、ぜひ研究なさって、その結果を世に知らしめてください。
「あらへん」問題で悩んでいる人はきっと多いと思います。』
いやあ、そんなにたくさんは「おらへん」のとちゃうやろか、とは思いますが・・・、しっかりと反応してくださってありがとうございます。
「来ない」の意味の「けーへん」に関しては、元・大阪大学大学院教授で、現在は奈良大学教授の
「きはせぬ」→「きやせん」→「きゃへん」(「きーひん」)「きーへん」→「けーへん」
というような変化を教えてくださったことがあります。つまり、
「せぬ」の「せ」→「へ」&「ぬ」→「ん」=「へん」
ということでしょう。つまりI先輩のご指摘どおりです!
関西弁で「サ行→ハ行」は現在も多くて、
「さようなら」→「それなら」→「そんなら」→「ほんなら」→「ほな」
「それで」→「ほいで」→「ほんで」
「そうしたら」→「そしたら」→「ほたら」
といった感じですね。
また、ご意見お待ちしています!