新・ことば事情
4048「野望」
(平成ことば事情3612「あなたの野望はなんですか」で書いた「野望」と同じですが、「追記」ではなく、新たに項目立てしました。)
7月3日の深夜(7月4日の未明)に放送していたワールドカップ南アフリカ大会、準々決勝「アルゼンチン対ドイツ」は、予想外の大差(4対0)でドイツが勝利を収めるという結果になりました。
前半3分、あまりにも早い時間での失点でアルゼンチンのペースが狂い、そのアルゼンチンの反撃・猛攻を防ぎきったドイツの2点目で、勝負はついたといえるでしょう。
さて、試合終了のホイッスルが鳴ったとき、中継していたTBSのアナウンサーが、こう言いました。
「選手としての優勝、そして監督としての優勝というマラドーナ監督の野望、潰(つい)えました!」
・・・いいのかなあ、「野望」って言っちゃって。
「マラドーナさあ、おまえいろいろあったんだからさあ、たしかに5人抜きはすごかったし選手では優勝できたけど、神の手?あれハンドだろ。あれで優勝しておいて、監督でも優勝だ?それはちょっと、どうなのよ、その"野望"はさあ」
という意図は全くなかったと思いますが、「野望」は、ここでは使わない方がよくなかったですか?言い換えるなら、シンプルに、
「(大きな)目標」
とか。ああ、パンチに欠けますね、たしかに。
これまで「選手」としても「監督」としてもワールドカップで優勝した人は、ブラジルのザガロと、(西)ドイツのベッケンバウアーの2人しかいないそうですから、長いワールドカップの歴史で3人目を狙った(?)マラドーナ監督、残念でしたね。
でも本人は本当に、そんな「野望」を持っていたのでしょうか?「監督」というものは、チームが勝つことを一番に考えていて、自分の経歴としての優勝なんてことを考えるのかな、マラドーナほどの人が。「周りが勝手に、そう思っている」だけじゃないのかな?とも感じました。
(追記)
まさにこれを書いた7月7日の夜のスポニチ・ケータイニュース見出しが、
「川島、野望への第一歩」
ベルギーのチームへの移籍が決まった日本代表のゴールキーパー・川島永嗣選手のニュースで「野望」が出てきました。スポーツニュースは「野望」が好きのようです。