新・ことば事情
4043「勇気がない」
毎週月曜の午前中、甲南大学で「マスコミ言語研究」という講座を担当しています。前期だけですが。「放送で使う言葉」の話をしています。講義が終わって、学部事務局にチョークなどを返しにいった時に目についたポスターに、こんな文句が。
「アジアに興味があるけど言葉に自信がない、長期留学する勇気がない、そんなあなたにぴったりなエリアスタディ、5日間」
うーん、確かに最近の学生はあまり海外に行かなくなっていて、留学を募集しても、これまでだと抽選になるぐらい応募が殺到したのに、枠が余るような状態だと聞いたことがあります。経済的な問題もあるのかもしれませんが、それよりインターネットなどのバーチャルな世界で、
「世界中を見尽くした気持ち」
になっているので、
「別に現地に行かなくても、もう知ってるし・・・」
ということなのかもしれません。それはなんだか若者っぽくないですよね・・・。
しかし、です。たしかに短期の「おためし」のような形の海外体験はそれはそれでよいことだと思いますが、この惹句・コピー、どうなんでしょうか、
「長期留学する勇気がない、そんなあなたにぴったり」
というのは?
「勇気がない人におすすめ」
とうたったツアーに参加する勇気が、あなたにありますか?かえって気が引けてしまうのでは?と心配するのは、私に勇気がないからでしょうか?
ここまで言われて申し込む人がいるのか、このコースは埋まっているのかどうか、係の方に聞く勇気は、私にはありませんでしたが・・・・。