新・ことば事情
4012「埋却」
「ミヤネ屋」の「ヨミ斬りタイムズ」で紹介する新聞記事を選んでいたら、6月7日の産経新聞夕刊にこんな見出しが。宮崎県の口蹄疫関連の記事です。
「900頭共同埋却へ移動」
この中に出てきた、
「埋却」
という言葉、初めて目にしました。おそらく、
「まいきゃく」
と読むのでしょう。「焼却」からの連想で、意味は、
「(焼くのではなく)埋めて処分すること」
というのは想像がつきますが、耳慣れない言葉です。
月曜日の「ヨミ斬り」コーナー担当の山本アナウンサーに聞いたところ、
「そうなんですよ、先週土曜日の『あさパラ』の原稿にも、実はこの『埋却』が出てきて、『どう読むんだろう?』って辞書も引いたんですけど、載ってなくって・・・」
たしかに、『広辞苑』『明鏡国語辞典』には「埋却」は載っていませんでした。こういうときは、これ、『精選版日本国語大辞典』。ほら、載っていました!
「まいきゃく(埋却)」=地中などにいまること。また、うめること。
なんと用例は『狂雲集』という15世紀後期の漢詩でした。古い言葉なんだ。しかも漢詩かあ。
まあ、意味は分かりますが、耳慣れないお役所言葉でしょうから、ニュースで伝えるときは(書き言葉の新聞と違って、話し言葉の放送では)、
「(焼かずに)埋めて処分すること」
と言い換えた方がいいね、ということになりましたが、その記事は結局、紹介しませんでした。
(2010、6、7)
(追記)
6月15日の正午のNHKニュースでは「埋却」という言葉を使わずに、
「家畜を埋める作業」
という表現を使っていました。