新・読書日記
2010_117
『世界一幸福な国デンマークの暮し方』(千葉忠夫、PHP新書:2009、9、1第1刷・2009、10、2第2刷)
去年買って、「積んどく」になっていたが、南アフリカワールドカップの第3戦で日本が対戦するのが「デンマーク」ということで、これも「今しか、読むチャンスはない!」と読みました。
それぞれの章の頭に、デンマークが誇る童話作家アンデルセンの有名な童話「マッチ売りの少女」「はだかの王様」「みにくいアヒルの子」「赤い靴」「ナイチンゲール(夜鳴きうぐいす)」「人魚姫」を配し、それをきっかけとして、デンマークという国の歴史と現状をひもといていくという形は、なかなか分かりやすくてよかった。
「コペンハーゲン」ってデンマーク語で「商人の港」という意味なんだそうです。また選挙の投票率は90%以上。そして保守連合政権が、これまでの「社会省」を「福祉省」に改称し、さらに社会福祉を国家として国民の生活を保障することをアピールしたものの、2009年にまた「社会省」に戻したそうです。というのも、「福祉」という言葉はデンマークでは「死語」に等しいからだそうです。「福祉」が当たり前で、特別のことでなければ、そういった特別な名称はなくても良いということなんでしょうね。
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(2010、6、28読了)
2010年6月29日 19:12
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新・読書日記
2010_116
『大臣・増補版』(菅直人、岩波新書:2009、12、189
「いま読んでいると、『枝野幸男』とか『荒井聡』とかの名前が出てきて、彼らと菅直人とは、これが最初に書かれた時、つまり『1998年からの仲間』であり、それはすなわち今回の内閣が、『旧・新党さきがけ内閣』だということを示しているのだなと思いました。内閣のサプライズで民間人起用で、あるいは顧問として、武村正義とか田中秀征が出てきたりして」
と6月4日の段階でメモしていました。(結局、そんなことは「なかった」のですが)
去年、民主党が政権交代を果たしたときに、旧版を補ていする形で出た「増補版」。で、読もうと思って買ったまま年を越している間に、何と内閣が変わって菅さんが総理大臣に。「もう、今しか読む時はない!早く読まないと、また、かわっちゃう・・・」
ということで読みました。
「ミヤネ屋ファミリー」(火曜日出演)の高野孟さんは、蓮舫・行刷大臣の「仲人」というのは知られたことですが、菅さんが橋本内閣で「厚生大臣」になることに"反対"した「3人のうちの1人」であった、なんてエピソードも出てきました。
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(2010、6、7読了)
2010年6月25日 18:00
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新・読書日記
2010_115
『ガラスの巨塔』(今井彰、幻冬舎:2010、2、25)
NHKの『プロジェクトX』の元プロデューサーが、NHKを辞めて書いた小説。でもたぶん、ほとんど「ノンフィクション」・・・と思って読むから、おもしろい。
ふーん、そんな裏話があったのか、結局、組織って「人間関係」なんだよなあ・・・と思わせる"小説"。
最後のところが、ちょっと意表を突かれたが、
「そう言えば、そんなこともあったな、あれがそうだったのか!」
と思い出した。とは言え、「フィクション=小説」ですから、どこまでが本当で、どこからが虚構か、またもし「ノンフィクション」だとしても、一方の側からだけ書かれたものなので、そのあたりは割り引いて読む必要があるだろうが。おもしろかった。面白うて、やがて・・・。
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(2010、5、30読了)
2010年6月25日 14:00
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新・読書日記
2010_113
『貧困大国アメリカⅡ』(堤未果、岩波新書:2010、1、20)
ベストセラーとなった『貧困大国アメリカ』の第2弾。
アメリカで今、「貧困」を生み出すきっかけとなっているものに「学費ローン」があると。大学が次々に学費を値上げし、それをブタイにして「学費ローン」が、お金を借りて払わないと経済的に大学へ行けない学生たちを食い物にしているという現状、オバマ政権になって、それが救済されるどころかさらに深みにはまっている現状のルポ。住宅を舞台にした「サブプライムローン」と同じ、いやそれ以上に厳しい構図が、「学費ローン」で起こっていると、著者は鋭く抉り出している。
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(2010、6、18読了)
2010年6月25日 05:00
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新・読書日記
2010_112
『憚りながら』(後藤忠政、宝島社:2010、5、29第1刷・2010、6、25第4刷)
著者は元暴力団・後藤組組長。五代目山口組若頭補佐。「経済ヤクザ」としても知られた(帯によると)「伝説の組長」。現在は山口組を去り、何と「得度」して僧侶となり、得度名「忠叡」。週刊誌の書評で見ておもしろそうなので買ってみたら、既にベストセラーになっているではないですか。
内容は、インタビュー内容を再構成した、いわゆる「語りおろし」。話の内容は「ふーん」「へー」と、日ごろ我々の「知っていること」と「知らないこと」が、どうつながっているかなど、興味深い。特に、最近の大相撲の野球賭博などで、そういった部分に興味が注がれているので、直接それに言及したものはないが(当然、本の方が先に出ているし)、「やっぱりな」と感じさせるような出来事をたくさん"証言"している。核心は語っていないと思うが。印象としては「アサヒ芸能」。
そして、著者のしゃべり方(文体)で「何かに似ているな」と思ったら、某週刊誌で連載している「ビートたけし」のエッセイ(おそらく「語りおろし」)にそっくりなのだ、受ける印象が。そういう本だ。
また、映画『BOX~袴田事件 命とは』の「企画」を出したのがこの人だったとは、驚いた。
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(2010、6、21読了)
2010年6月25日 04:15
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新・読書日記
2010_111
『ことばのことばっかし~「先生」と「教師」はどう違うのか?』(金田一秀穂、マガジンハウス:2010、2、25)
書評で見て買ってしまいました。金田一秀穂先生の本、あまり内容は好きではないことが多いのですが。これは、今はなき雑誌「ダ・カーポ」に連載していた言葉のエッセイを集めたものということで、つい懐かしくて買ってしまいました。
映画「ジョーズ」の舞台となったアメリカのチルマークという漁村は、5分の1が聾者で「手話」が共通語になっているという話や、チョムスキーの授業をMITで受けたが、その際に手話通訳者が付いていて、チョムスキーの高等な話を即時に手話通訳してしまうことに驚いた話など、意外にも面白かった!
「イピピとオポポは夫婦です」
という文がある場合、「どちらが夫で、どちらが妻か?」と聞かれたら、
「イピピが女で、オポポが男」
と答えるのではないかというのも納得。また「ツン・チン・ドン・トン・テン」を、高いと思われる純に並べると、普通の日本人は、
「チン・ツン・テン・トン・ドン」
と並べるという話も納得。私は、間違いなく普通の日本人!
「左右自在の言葉」で出てきた、「NI」というサイン看板、私も見つけましたよ!お店の駐車場の入り口にある、逆から読むと「IN」になるサインボード!(「平成ことば事情3404「NI」参照)
いやあ、なかなか勉強にになった。
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(2010、6、13読了)
2010年6月25日 03:24
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新・読書日記
2010_108
『気持ちがホッとする禅のことば』(酒井大岳、静山社文庫:2010、1、5)
たまーに、この手の本を読むのですが、期待したほどではないことが多いです。それは読み手の心得がなってないからなのかもしれませんが。天邪鬼だし。
今回は本の内容もさることながら、
「あの『ハリーポッター』で有名な『静山社』が、『文庫』を出している!」
という興味で購入しました。
「莫妄想(思い煩うことなかれ)」
「磊磊落落(小事にこだわらない)」
そうありたい!
「我痴、我見、我慢、我愛」
これらをしっかり抱いて離さない人を「我の強い人」といい、これらを持たない人を「無我」というなど、勉強になりましたです。
こういう講話をお坊さんには期待したいですが、なかなか聞けないですね。
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(2010、6、12読了)
2010年6月23日 17:25
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新・読書日記
2010_107
『常用漢字の事件簿』(円満字二郎、NHK生活人新書:2010、5、10)
絶妙のタイミングでの出版。というのも先日、文化審議会が文部科学大臣に「改定常用漢字」の答申をした。5年がかりで検討してきて、ようやくこの秋にも施行される。これまでの常用漢字1945字から5字削減し、196字増やした。そういった「常用漢字」について、1979年からこれまでの、世の中と漢字のかかわりを示しながら、「なぜいま、常用漢字か」「なぜいま、改定か」ということに、円満字さんが斬り込んで行った。
円満字さんの著作は、対象物件(今回だと「常用漢字」)に対する愛情に満ち溢れている。「好き」なのだ。
それが余すところなく記されている。その一方で冷静な目で、頭で判断している。そういった一冊だ。
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(2010、5、21読了)
2010年6月15日 23:23
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新・読書日記
2010_106
『サッカーの見方は1日で変えられる』(木崎伸也、東洋経済新社:2010、5、12第1刷・2010、5、28第2刷)
惹句に「フォーメーションにこだわるのは間違い」というようなことが書いてあって、こないだから杉山さんの「フォーメーションがすべて」みたいな本を読んでいたので、「え、どういうこと?」と、つい買って読んでしまいました。
サッカー経験者の私から言わせると、確かにそれぞれのポイントは「プレーヤー目線」というか、「こうすれば失点を防げる=強いチーム」、というような感じで、わかってはいるけど、整理して考えてなかったかなーというイメージですね。これを読むと、考えが整理される感じ。プレー経験者でなければ「目からウロコ」の部分もあるかもしれません。分かりやすい一冊でした。タイトルに嘘はないと思います。
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(2010、6、3読了)
2010年6月 8日 16:39
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新・読書日記
2010_105
『ワールドカップは誰のものか~FIFA の戦略と攻略』(後藤健生、文春新書:2010、5、20)
序章・終章を含めると8つの章からなる本書、前半の第一部はワールドカップと政治の歴史を、そして後半の第二部南アフリカ開催の意義は文字どおり、今回の南アフリカワールドカップについて詳細に書かれている。
後藤さんはサッカーの歴史家、語りべともいう方で、サッカーの歴史を語らせたら右に出る人はいないのではないか。資料に基づいて話を進める姿は、学者である。ただその分、読み物として読むには、少し堅苦しさもあるかも。昔の新書的な教養溢れる内容である。
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(2010、6、6読了)
2010年6月 7日 17:02
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新・読書日記
2010_104
『人間の建設』(小林秀雄・岡潔・新潮文庫:2010、3、1第1刷・2010、4、5第3刷)
評論家・小林秀雄と数学者・岡潔の対談集。昭和40(1965)年10月号『新潮』に掲載されたもの。3月に出てもう3刷ということは、結構、売れてます。この中で「ふーむ」と思ったのは、主に数学者・岡潔さんの発言です。
「無明ということを言っていないのはギリシャ人だけです。ギリシャ人は、人は理想が大事だといっているようにきこえる。理想というのは無明をこえた真な自分の心です。しかしアテネには、人の心の自由と、小さなほしいままの心とをはきちがえたところがあって、それがアテネが滅ぶ原因になっていると思いますが。」
「芥川もギリシャは東洋の永遠の敵である、しかし、またしても心がひかれると言っておりますね。」
「欧米の文明はギリシャから発したのですから、ギリシャをよく調べないと、わからないでしょうね。」
「ローマ時代は明らかに暗黒時代であって、あのときの思想は功利主義だったと思います。人は政治を重んじ、土木工事を求める。そういうものしか認めない。現在もそういう時代になってきています。ローマの暗黒時代そっくりそのままになってきていると思います。これは知力が下がったためで、ローマの暗黒時代は二千年続くのですが、こんどもほうっておくと、すでに水爆なんかできていますから、この調子で二千年続くとはとうてい考えられない。(中略)人類が滅亡せずに続くことができるのは、長くて二百年くらいじゃないかと思っているのです」
この話を聞いていると(読んでたんだけど、聞いてるような錯覚に)、「ギリシャはえらい!ローマはダメ」のように聞こえました。「ローマ人の歴史」を書いている塩野七生さんは、どう感じるのだろうか?と思いました。また「ギリシャ、昔は凄かったんだろうけど、最近は・・・」とも思いました。また、
「欧米人の特徴は、目は見えないが、からだを使うことができる。西洋音楽の指揮者をテレビで見ておりますと、目をふさいで手を振っている、あれが特徴ですね。欧米人の特徴は運動体系にある。いま人類は目を閉じて、からだはむやみに動きまわっているという有様です。いつ谷底へ落ちるかわからない。」
「いま日本がすべきことは、からだを動かさず、じっと坐りこんで、目を開いて何もしないことだと思うのです。」
という岡さんの話。あれ?これは養老孟司さんと、まったく逆の意見では?と、いろいろ刺激を受けました。
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(2010、6、3読了)
2010年6月 6日 18:02
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新・読書日記
2010_103
『日本人へ~リーダー篇』(塩野七生、文春新書:2010、5、20)
帯の文句は、
「なぜリスクをとるリーダーが出ないのか」
これ、そのまま今の民主党に・・・鳩山さん、菅さんにぶつけたいような・・・。
その下には、
「危機の時代こそ歴史と向き合え!21世紀の『考えるヒント』40本」
と。「考えるヒント」は当然、小林秀雄の有名な本のタイトルに引っ掛けたのでしょう。
で、読んでみると大変ためになります。どれも短いがビシッとしている。きりりと引き締まっている。これ、どこかで連載されていたんだろうな。それが書かれていないのですが、おそらく『文藝春秋』の巻頭のエッセイなのではないか?と思って読み返すとちゃんと最初のほうに「初出・文藝春秋2003年6月号から2006年9月号」と書いてありました・・・。
ちょっと古いんだけど、内容は古くない。こういうのを「不易流行」と言うのでしょう。
でも・・・実はこの後に読んだのが、45年前に行われた小林秀雄と数学者・岡潔の対談集なんだけど、その中で岡は「ローマ」を否定してるんだよねえ。ギリシャをほめてて。立場の違いなんでしょうか?
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(2010、5、26読了)
2010年6月 5日 18:54
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