新・ことば事情
3999「絢香の歌詞の歌い方は」
去年の大晦日の「NHK紅白歌合戦」を最後に、病気治療のため活動を休止した歌手の絢香さん。
年が明けてから(いまごろになって)、改めて彼女の歌の魅力にはまっています。自動車に乗るときは、必ずCDをかけています。
で、彼女の歌は"何が"こう惹きつけるのか?運転しながら考えてみました。その結果考えついたのは、
「発音に日本語じゃない部分がある。英語的。母音の音が違う。」
ということ。英語の部分の発音が英語っぽいかというと、決してそうではないのですが、日本語の部分が英語っぽい。たとえば、
「高い壁」
という言葉を「たかいかべ」ではなく、
「たけいけべ」
と歌っているように聞こえます。「か→け」なんですね。「A」の母音を「E」に近く発音しています。全部じゃないけど。これがカッコイイ。
また、もう一点、日本語の歌詞なのに英語っぽく聞こえる理由は、
「無声化の音が多い」
ということ。母音を大切にする日本語と違って、母音を無声化させて発音すると、とっても英語っぽく聞こえるんですね。雰囲気としては、
「息漏れが多い」
これも、テクニックなのかな。宇多田ヒカルさんも、そういう部分があるんですよね、息を漏らすような歌い方。もっとも彼女の場合は、最初から英語が出来るんだけれども。
音がハッキリ出ていれば音楽的かと言うと、必ずしもそうではないということは、『千の風になって』を歌っているオペラ歌手の人の歌い方を聴いていると、よくわかりますね。あれとは対極的な感じがします。ベルカント唱法的には正しく、オペラはあれで良いのでしょうが、「日本語の歌の歌心」としてはどうなんでしょうね・・・。これは好き嫌いですので、「絶対こうだ」とは言い切れませんが。趣味の問題は、人それぞれですし・・・。