新・ことば事情
3971「『パチる』と『パクる』の違いは?」
先日、家族の会話の中で出てきた言葉の疑問に、
「『パチる』と『パクる』はどう違うのか?』
というのがあります。・・・って、どんな家族の会話やねん!?
それはさておき、思うに「パクる」は、「(アイデアを含めて)盗むこと」で、「パチる」は「物を掠(かす)め取ること」かな?
こういうときは『日本俗語大辞典』(
*「ぱちる」(動)=万引きする。盗む。若者語。【類義語】ぱくる・へちる(例)『現代用語の基礎知識1992年版』若者用語「ぱちる 取ってくる。万引きする。へくるともいう。」
*「ぱくる」(動)=(1)(「縛」から)警察が捕まえる。盗人のことば。<略>(2)かっさらう。盗む。不良のことば<類義語>ぱちる・へちる。(例)「社会観察万年筆」二八(1914)<松崎天民>「盗むことを『パクル』」・『どくとるマンボウ青春記』初めに空腹ありき(1968)<北杜夫>「盗むことを私たちは『パクる』と言った。『包む(パッケン)』からきた言葉らしいが、こういう高校生用語、あるいは松高用語はいくらでもある」・『ミネストローネに乾杯!』(1988)<花井愛子>「すぐ一谷さんのセリフをパクる」・『現代用語の基礎知識1994年版』若者用語「ちょっぱる/ぎる/じる/がめる/ぱくる/きめる かっぱらい。かってにいただく。盗む。万引きする」
名詞形の「ぱくり」も載っていました。
*「ぱくり」(名)=かっぱらい。盗み。不良のことば。(例)『東京語辞典』(1917)<小峰大羽ね>「ぱくり 『かツぱらひ』に同じ、『――る』『――書生』不良学生が無線持ち逃げするに起因す」・『新らしい言葉の字引』訂正増補(1919)<服部嘉香・植原路郎>「ぱくり 物をパックリとごまかす処から此の称が出たもの?不良少年・不良少女の常習とする処で、物をさらってゆくこと」・『半自叙伝』(1928~29)<菊池寛>「東京の不良少年が、パクリをするとき」・『テレビ局の人びと』(1996年)<笠原唯央>「この番組にかぎらず同様な"パクリ"まがいの手口が各局で堂々と行われているわけです。」
いやあ、えらい用例が最後に・・・・。
「ぱちる」の方が「ぱくる」より「ショボイ」感じがするのは、「ち」と「く」の個人的な語感の違いでしょうか。
意味の上での使い分けが出来ているとは思えませんが、『日本俗語大辞典』の用例から見ると、「ぱくる」の方が古い言葉(1914年の用例あり)で、「ぱちる」は新しい言葉(1992年の用例)のように思えます。また、「ぱちる」には、「パチモン」という言葉のイメージもついているのかもしれません。「パチモン」は『大阪ことば事典』(牧村史陽)によると、
「パチモン」=はんぱもの。三流品」
とのことです。