新・ことば事情
3986「松阪慶子さんのナレーション」
先日、大阪・中之島の国立国際美術館で開かれている「ルノワール展」(『ルノワール~伝統と革新』)に行ってきました。
「ルノワール」と言うと、その昔、年末に銀行からもらったカレンダーの絵(もちろん複写)というイメージがあり、「いまさら・・・」感もあったのですが、行ってみると、いやあ、これがなかなかよかったですよ。
「ルノワールへの旅」「身体表現」「花と装飾画」「ファッションとロココの伝統」の4つのコーナーに分かれていて、展覧会そのものが「きっちりと構成されている」感じ。単に「ルノワールの絵を集めて展示しました」というような展覧会ではなく、きっちりと分析している様子に、主催者側の「主張」を感じました。
たとえば「身体表現」のところで、年代別に並べられたルノワールの「裸婦像」は、1882年のものは肌の色が白に青みがかった「寒色系」な感じなのに対して、1887年の作品は水彩のように淡い感じの肌色。1888年は82年と同じような色に戻りますが、1891年の作品は、いわゆる「肌色」の「暖色系の色」になり、1910年には肌色が「ピンクを帯びた暖かい色」に変わり、さらに晩年の1917~19年には、もう「オレンジ色」といった方がいいような色に変わってきています。それが目で見て分かっただけでも収穫あり。また、晩年の点描は、光の粒が大きくなっていますが、もしかしたらルノワール、目が悪くなってきていたのではないか?と思わせました。
また、「読書をする女性」などの構図のものが結構ありましたが、よく考えたら、この時代に本を読める(字が読める)ということは、かなりのインテリ。本を読んでいるという構図は、現代ならさしずめ、パソコンやケータイをいじっている感じでしょうか?さらには「i―Pad」で本を読んでいるようなものになるのでは?あ、これ、ルノワールの「i―Padを読む女」なんて絵は、パロディで「あり」かも。
さて今回は、美術展ではおなじみの「音声ガイド」を利用しました。500円で、27もの作品の説明をしてくれるのは「お得」です。
音声ガイドのナレーターは女優の松坂慶子さん。ルノワール(の美人画)のイメージにピッタリですね。最近、女優さんがこういった仕事をやるのも流行っているのでしょうか?
ただ、音声ガイドを聞いていて、アナウンサーとして気になった点がいくつかありました。一番気になったのは、
「作品」
の「ク」も「ヒ」も無声化されずに、「サクヒン」と全部「有声音」だったこと。これはちょっといただけないなあ。また、「背景」を、
「ハイケイ」
と、これも全部の音をしゃべってました。
「ハイケー」
というふうに後半の「ケイ」は「ケー」と長音化した方が、「キレー」に聞こえるのになあ。
また「新事実」という言葉のアクセントが「シ/ンジ\ジツ」ではなく、
「シン/ジ\ジツ」
でした。
ルノワールの絵画を楽しむとともに、そんなところにも耳をそばだててました。
6月27日までやっているから、もう1回ぐらい、見に行ってもいいなあ。