新・ことば事情
3950「八角弁当の八角」
「水了軒」が、破産申請をして事業を停止するという記事が、4月21日の朝刊に載っていました。
こう聞いてもご存知ない方も多いかもしれませんが、「水了軒」は1888(明治21年)創業の大阪の老舗・駅弁屋さんです。特に代表的なお弁当は、
「八角弁当」
文字通りこれ、私は結構好きで、新大阪駅から新幹線に乗るときなどには必ず買っていたのですが、もう食べられなくなるのかなあ。
以前、その「八角弁当」を買ったときのこと、
「ハッカク弁当下さい」
とお店の人に言うと、その売り子のおばさんが、
「はちかく弁当ですね」
と言うではないですか!
「はい・・・・そうです」
とは言ったものの、
「私は『ハッカク』と言ったのになぜ『はちかく』と言い直すのだろうか?」
と疑問に思っていました。そして
「もしかして『八角弁当』は、正式には『はちかく弁当』というのか?」
という疑問が残ったままでした。
けさ、会社に来ると報道業務のNさんが、
「水了軒が破産したけど、『ハッカク(八角)弁当』のことを、けさのテレビのニュースで『はちかく弁当』と言ってたで」
と教えてくれました。そこで、
「ああ、あれはもしかしたら正式には『はちかく』なのかもしれません」
という話をしました。
なぜ、そうなるのか、考えました。
大阪の人間は「母音無声化」がないので、「八角」は、
「『はちかく』と『無声化せずに』」
言います。標準語では「はちかく」と言うと、
「『ち』の音が『無声化して』聞こえにくくなる」
ので、それが長い間に促音の小さい「っ」になって「はっかく」になったと考えられますが、無声化のない大阪では、そのまま「はちかく」で残ったのではないかと。ただ、梅田のDDハウスにある 「なにわ炉端・八角」は「はっかく」です。と店舗情報も含めて答えました。
「6」と「8」の無声化と促音化の関係については、「平成ことば事情2656」で書きましたので、読んでみてください。