新・ことば事情
3925「おされな」
川上未映子さんの『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(講談社文庫:2009、11、13・単行本は2006年12月ヒヨコ舎刊)という本を読んでいたら、
「おされな空間およびマンハッタン調空間での挙式と披露宴八十人お呼びで諸費用三百二十万円。」
という記述が。この、
「おされな」
というのはもちろん、
「おしゃれな」
の意味です、ちゃんと言うのであれば。
「おしゃれ」と「おされ」はどう違うのか?
「おされ」というのは、「おしゃれ」の価値・意義は認めつつ、それを素直に受け止めることには抵抗があり、わざと「しゃ」という拗音を発音せずに「さ」にすることで、「違和感を表そう」としている言い方ではないでしょうか。また、世間一般の感覚と同じように「おしゃれ」ということに「照れ」「衒(てら)い」があり、ちゃんとした発音をわざと避けているとも言えるかもしれません。
「ばっちり」→「ばっちし」
というように語尾をちょっと変えるのも、従来の言い方をそのまま使うことには抵抗があり、カスタマイズしているという点では、似ている部分があるかもしれません。(ちょっと違うか。)また逆に、
「~です→~でちゅう」
のように、わざと「赤ちゃん言葉」のような拗音を使うのも、「おしゃれ→おされ」とは逆の方法ですが、「照れ」「衒い」を隠すという意味で、意図するところは似ている気がします。Google検索では(4月15日)、
「おされな」=254万0000件
「おされ」 = 43万8000件
「オサレな」= 39万6000件
「オサレ」 =107万0000件
「おサレな」= 12万0000件
「おサレ」 = 3万4800件
でした。「おされな」は結構ネット上では使われているのですね。念のため、
「おされな、おしゃれな」=18万0000件
でした。オオーッ。
そう言えば、『ビッグコミックスピリッツ』で連載されている『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平)というマンガで、少し前の連載で、
「オサレ帝王(エンペラー)」
とかなんとかというのが、テーマになっていたことがありましたね。