新・ことば事情
3920「嵐電のアクセント」
視聴者センターのKさんからメールが来ました。
「視聴者から『かんさい情報ネットten』で放送した『「嵐電」100周年』について、『"嵐電(らんでん)"のイントネーションが、関西人でもしないようなアクセントで放送されていた。正しいアクセントを嵐電の会社の人に聞くなり、地元の人に聞くなりしてから放送をしてはどうか。夕方のNHKは聞きやすい自然なアクセントだった。』という意見が5件届いたが、コメントをいただけないか?」
とのこと。「番組内容に関する視聴者の意見については、番組のCPに聞くべきだと思う」と断った上で、こういったメールを返しました。
『この問題は難しくて、「地名」などに関して、地元では「平板アクセント」で言う傾向が全国各地にあって、それと共通語アクセントが違うケースはよくあります。例を挙げると、
(地元アクセント) (共通語アクセント)
名古屋 ナ/ゴヤ ナ\ゴヤ
高知 コ/ーチ コ\ーチ
長野 ナ/ガノ ナ\ガノ
富山 ト/ヤマ、ト/ヤ\マ ト\ヤマ
姫路 ヒ/メジ ヒ\メジ
などが有名です。地元では「平板アクセント」でも、共通語でアクセントがわからない地名に関しては「頭高アクセント」で読む傾向があるのです。もっとも「姫路」の本当の地元アクセントは、
「最初の『ヒ』の音から最後の『ジ』の音まで『3音全てが高い』アクセント」
ですが、こういったアクセントパターンは、共通語アクセントにはありません。
「嵐電」は、地元で「平板アクセント」だと聞きましたが、これは共通語アクセントの「平板アクセント」である、
「ラ/ンデン」
ではなく、おそらく、
「ランデ/ン」
という、最後の「ン」だけが高くなるアクセントではないでしょうか?これも共通語アクセントには、ないパターンです。
また、大阪の人のアクセントで「嵐電」を読むとおそらく、
「ラ/ン\デン」
でしょう。
あるいは年配の方の中には、
「ラン/デ\ン」
という方もいらっしゃるかも。
大阪弁のアクセントパターンには「3拍中高」(例:「テ/レ\ビ」「ラ/ジ\オ」「マ/ク\ド」「カ/ン\クー」)というのがあって、それに当てはめると、こうなる可能性があります。
人は、自分が使っている言葉は「絶対だ」と思い込む傾向があるので、なかなか、ことはやっかいです・・・。」
ということで、納得してもらいました。視聴者の方が納得したかどうかは、分かりませんが・・・。