新・読書日記 2010_085
『漢字の相談室』(阿辻哲次、文春新書:2009、6、20)
去年出た本だが、買ったあと本の山の「積んどく」の下の方に入っていたが、5月に阿辻先生の講演を聞く機会が出来たので、「ならば、読んでおかねば」と読み出すと、読みやすいしおもしろい。
今年秋に新しくなる「改訂・常用漢字」の審議委員のお一人である阿辻先生、いったいどのような考えでいるのか?と思い、読んだ。
現在の常用漢字表で「しんにゅう」は、点が1つの「1点しんにゅう」を採用しているが、新しく常用漢字表に加わる漢字は、点が2つの「2点しんにゅう」のままで入ってくるのです。これに私は、納得がいかない。阿辻先生は、
「『康煕字典』では『2点しんにゅう』だから、『2点しんにゅう』が伝統的には正しい」
というお考えと、
「既にパソコンでは、今度常用漢字表に新たに入る漢字は『2点しんにゅう』になっているから、それに従うしかない」
というお考えのようですが、特に教育現場では「伝統的に正しいか正しくないか」ではなく、「わかりやすさ」が求められると思います。
これまでは「1点」と「2点」の違いに関しては、
「常用漢字であるか、そうでないか」
という単純なわかりやすい理由付けが出来ましたが、今後同じ常用漢字表に「1点」と「2点」が混在すると、
「新しく入ったのは2点で、前からあるのは1点」
というややこしい事態になってしまいます。
よく言うのですが、たとえイチローであろうと、WBCで日本代表として出場するときは、「JAPAN」のユニホームを着ます。マリナーズのユニホームではなくて。新しい「伝統的に正しい」漢字たちも、「常用漢字表」という「代表チーム」に入るときは、そのユニホーム(1点しんにゅう)を身に付けるべきではないでしょうか?
今回の常用漢字表の改訂では「書けることよりも、読めることを重視」という、パソコン普及に伴う改訂になったと思いますが、この「1点か2点か」という問題は、特に「手書き」で問題が出るのです。そして、教育現場は「手書き」です。「常用漢字」とは「高校卒業までに身に付ける漢字」ですから、教育現場と密接に関わっています。
この本を読んでもその点に関しては、私の意見はこれまでと変わりませんでした。
コメント
誤解があるようですが、古来よりしんにゅうは手書き文字では1点です。だから教育現場ではどんな字も1点で書けばよいのです。1点・2点が問題とされるのは活字の場合のみです。
投稿者: かくた 日時:2010年05月01日(土) at 18:35