新・ことば事情
3910「クリック音」
最近のコマーシャルを見ていると、CMの最後のほうで、長方形の窓にそのメーカーや製品の名前が書かれていて、その横のところのボタンを「カチッ」とクリックするシーンがあります。コメントは付きません。音声は
「カチッ」
という「クリック音」だけです。この意味合いはもちろん、
「くわしくは、ホームページを見てね」
という意味ですよね。この手の広告、初めの頃はナレーションが付いて、
「くわしくはホームページで。http://●●●」
と、アドレスを全部読んでいたりしました。その次には、
「くわしくはウェブで」
となって、このときの「ウェブ」は「平板アクセント」の、「ウ/ェブで」。そして現在の主流は「カチッ」というクリック音だけに。音だけで、意図するところが判るなんて、
「パブロフの犬」
みたいなものですよね。すごいなあ、CMの反復作用というのは。
これによく似たものは、以前もありました。そう、「薬のCM」です。
「ピンポーン♪」
という注意を喚起する音のあとに、
「薬は用法・用量をお守りの上~・・・」
とくわしくしゃべっていたのに、最近は、
「ピンポーン♪」
だけ。しかもその擬音を、
「人に口で言わせている」
ケースも出てきています。
「薬は用法・用量をお守りの上~・・・=ピンポーン」
という等式が成り立っているのです。しかしそれに慣れてくると、新たな注意喚起の方法として、最初のような長いセリフの注意事項を早口で言わせたり・・・。
コマーシャルの表現方法の歴史を研究したら、それできっと論文が書けるような気がしてきました。
コメント
2007年秋の発表なので既にご存知かもしれませんが、博報堂らが分析したところ(http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/2007/HDYnews071010.pdf)
によれば、『「音声や効果音での注意喚起がなされていない広告」については、“検索窓”を表示している効果はほとんどない』とのことです。これでクリック音付きのCMが増加したのでしょうか。
投稿者: くもの巣 日時:2010年03月30日(火) at 21:12