新・ことば事情
3904「下から目線」
平成ことば事情3201で「上から目線」について書きましたが、「上から目線」という言葉が定着したからでしょうか、その逆の言葉が出てきました。
「下から目線」
です。よく駅の階段を上るときに、意図せずともそういう感じになってしまって、上にいる女性のスカートが気になって、
「いかんいかん、ここで上を向いたら、チカンに間違われる」
と思う、あの状態のことを指しているのでは、もちろんありません。
ここで使われている「下から目線」は、「上から目線」の正に反対の意味で、立場の上から見ているような「見下した感じ」ではなく、立場の下の人たちと同じ所におりていって、その人たちと同じ目の高さで接する、考えるということのようです。
この記事で取り上げられているのは、土井香苗さんという34歳の弁護士。見出しは、
「『下から目線』の大切さ痛感」
で、彼女は、1993年にエチオピアから独立したばかりのアフリカ東北部のエリトリアで、1997年5月から1年間、法務省調査員を完全なボランティアで勤めたそうです。現在、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」日本代表。彼女いわく、
「エリトリアは今、人権侵害国家になっている。独立当初、憲法草案を私は手伝ったが、結果的に"独裁国家"を手伝ってしまったことになる。」
「"良いこと"なら何でもいいというわけではない。HRWのような『下から目線』が大事なのだ」
と。「目線」を使うかどうかは別として、国家建設(独立)のときに、国を作る(ある意味)エリートの人たちの立場だけでなく、国民全般の立場も考慮する必要がある、ということを「下から目線」という言葉で表しているようです。
Google検索(3月24日)では、
「上から目線」=103万0000件
「下から目線」= 60万2000件
でした。