新・ことば事情
3901「『シンカ』のアクセント」
おかげさまで「平成ことば事情」も3900回を突破!めでたい、めでたい、愛でたい。あ、めでたいは「愛でたい」なのか?と変換ミスに驚きながら、4000回まであと一息です!
さて、その「ことば事情」の読者の方から質問を受けました。KAGURA さんという方です。
「このところ沖縄の基地問題が取りざたされていますが、日米同盟の『シンカ』という言葉が気になっています。テレビで見る限り、ほとんどの方が、『頭高アクセント』で読んでいると思います。ですから、どうしても日米同盟の『進化』と聞こえてしまい、違和感がありました。『日米同盟が、何かスゴいものに生まれ変わるのか?』と思ってしまいます。
そう思っていたとき、確か『ズームイン!!SUPER』で、羽鳥アナが『平板アクセント』で読んでいらしたので、『深化』なのだと理解できました。(テロップも出ていたと思います)素人としてはコチラのほうが分かりやすいのですが、どうなんでしょうか?素人なりに考えた事です。色々間違っていたらすいません。タイミングを外していたらすみませんが、どうしても気になったもので・・・。」
という質問。そんな微妙なところに気付くなんて、ご自分では「素人」とおっしゃってますが、実は素人ではありませんね?
ああ、全然気付かなかったなあ、「シンカ」。「進化」と「深化」、両方ありますね。はたしてアクセントは違うのか?アナウンサーならまず「アクセント辞典」を引きますね。まず『NHK日本語発音アクセント辞典』を引くと、「頭高アクセント」の「シ\ンカ」には、
「進化、深化、真価、臣下」
の4つの熟語が載っていました。つまり、
「『進化』と『深化』は、同じ『頭高アクセント』である」
と。そのほか「ジ\ンカ」とも読む「シ\ンカ」には、
「神火」
が載っていました。『新明解日本語アクセント辞典』でも、上の4つは同じ「頭高アクセント」で、それ以外にも、
「心火」
という言葉も載っていました。「頭高」です。アクセント辞典には載っていない「シンカ」を『新明解国語辞典』で引いてみると(この国語辞典は、アクセントも載っているのです)、
「神化」=頭高・平板
がありました。これは「頭高」と「平板」の両方のアクセントが使われているということですね。そのほかの言葉(シンカ)を『広辞苑』で調べると、
「心下、心窩、神歌、真仮、真果、新加、請暇」
が載っていました。アクセントは載っていないので分かりませんが。どの言葉も、私はこれまでの人生で使ったことはありません・・・。
ということで、KAGURAさん、結論から言うと「深化」は「頭高アクセント」で良い、アクセントの違いで単語の違いを区別していない、ということになります。羽鳥アナウンサーは、アクセント辞典が正しいとすれば、「間違っている」ということになりますね・・・。
ただ、羽鳥アナウンサーはKAGURAさんが考えたように、「進化」ではない「深化」を伝えるために、どうすればいいかを考えて、
「アクセントに違いを付けるという方法を試した」
のかもしれません。「平成ことば事情2049 防犯・判決・支援のアクセント」で散々書いたような、「防犯」「判決」「支援」「教育」「通信」「教育」といった言葉が、アクセント辞典には載っていない「頭高アクセント」で話されることも、ある種の工夫がなされた結果なので、こういった「アクセントの揺れ」は、ごく普通にあるものだと思われます。KAGURAさんこんなところでいかがでしょうか?