新・ことば事情
3877「国際児」
2010年2月10日の日経新聞夕刊に、
「比在住の子ども つらい境遇~母フィリピン 父は日本人」
という見出しの記事が載っていました。記事の内容は、日本人の父とフィリピン人の母に生まれた国際児のうち、フィリピン在住の子が父から認知された割合は日本にいる子の半分以下で、経済的支援を受けている割合も3分の1以下であることが国際移住機関(IOM)の調べで分かったというもの。そして、こうした国際児は、
「ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン」
と呼ばれているそうです。これに付いて、「国際児問題に詳しい」という山口元一弁護士がコメントしていますが、この記事には
「国際児」
ということばが特に説明なく、頻出していました。普段の会話では、
「ハーフ」
を使うところでしょう。
国語辞典を引いてみると、『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典』『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』『広辞苑』『新潮現代国語辞典』にも「国際児」は載っていません。「国際人」は載せている辞書がありましたが、意味が違います。「国際人」は世界を股にかけて活躍していますが、「国際児」は世界の股から生まれて「国」と「国」のまさに「際(きわ)」で見捨てられているような感じです。
Google検索(2月20日)では、
「国際児」=1万1900件
でした。いくつかのサイトから「国際児とは」を拾ってみると、
「国籍と民族が異なる男女の間に生まれた子ども」
「いわゆるハーフ、あるいはダブル(両親の国籍や民族が違っている子ども)のこと」
「国際家族の父と母の間に生まれた子ども」
など。
以前「平成ことば事情1784ハーフ・アメラジアン・国際児」に書いたように、米軍基地のアメリカ人との間に生まれた子どもを、
「アメラジアン」
と呼ぶことは以前からあったようですから、「ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン」は、それに準じるのでしょうか?そのあたりは、よくわかりません。
また、2月19日の朝日新聞には、
「仏⇔独 父を探して・・・占領下に生まれたハーフたち」
という「ハーフ」という言葉を使った見出しの記事を、フランス東部のバルバック村というところから、飯竹恒一記者が書いていました。それによると、
「ナチスドイツの占領下のフランスで、独兵と仏人女性の間に生まれた人たちが、顔も名前も知らない父親の軌跡をたどる動きが活発になっている」
のだそうです。独兵が残した子どもたちは仏全土で20万人とも言われ、そうした子どもたちは、父親を知らないで育ち、仏独のハーフだといじめられるという三重苦にさいなまれてきたのだそうです。2003年に、仏国内で元独兵を父親に持つ人たちの状況がテレビ番組で紹介されて広く知られるようになり、2004年には「アンファン・モディ(呪われた子どもたち)」という本が出版され、昨年(2009年)、独兵を父親に持つ証しとして独仏の二重国籍の取得も認められるようになったのだそうです。
戦争が残したものが、60年以上経ってこんな形で・・・。