新・ことば事情
3875「酷愛」
2月10日の読売新聞で、「読売文学賞」を受賞された作家の丸谷才一さんがインタビューを受けていました。その見出しが、
「酷愛の作品 解説存分に」
とありましたが、この
「酷愛」
という言葉、見慣れないなあと思い、本文でも使われているのかな?と見てみると、
「ジョイスを酷愛する作家にしてはじめて成った、生涯をかけた翻訳、研究だろう」
と本文でも使っていました。記事は尾崎真理子記者によるもの。
『精選版日本国語大辞典』『広辞苑』『三省堂国語辞典』『岩波国語辞典』に「酷愛」は載っていません。
「酷○」という形の言葉は『岩波国語辞典』では、
「酷悪」「酷遇」「酷使」「酷暑」「酷熱」「酷薄」「酷評」「酷吏」「酷烈」
の「9語」しか載っていませんでした。いずれも「酷」は「ひどい」という「マイナスイメージ」で使われていました。この「酷愛」はおそらく「プラスイメージ」で使われているのでしょうが、造語なのでしょうか?造語にしては「 」や" "が付いていないなあ。同じようなイメージの言葉としては、ちょっと甘いイメージはあるけれど、
「溺愛」
があります。「溺愛」は「出来あい」の言葉だから避けたのでしょうか?
Googleで検索してみると(2月22日)、
「酷愛」=34万6000件
もありました!ネット上ではものすごく使われているようですね。「日本語のページ」に限ると、
「酷愛」= 3240件
お、激減。ということは、「中国語から入ってきた言葉」なのか?
「濃く愛」
ということかな?