新・ことば事情
3848「講師の真ん前3列目で大きな口をあけて欠伸をする女子大生」
おととし(2008年)の6月頃の話です。
講師として行っている甲南大学で、「マスコミ言語研究」という講義をしていたときのことです。黒板を書いていた手をとめて、説明のために学生の方に向き直ってしゃべっていたところ、私の真ん前の、前から3列目の関に座っている女の子が、いきなり大きな口をあけてあくびをしたのです。口に手を当てることもなく。
普段は学生の自由にさせている私も、さすがにこれは、見とがめました。
「私が一生懸命、キミたちに向かってしゃべっている、その真ん前、キミより前に座っている人はいないのに、私に向かって大きな口をあけてあくびをするのは、いくらなんでも失礼ではないですか!そんなことを、たとえば就職の面接に行ってやるかい?やらないでしょ!?」
と叱ったところ、ちょっと教室の空気は締まりました。
授業が終わってから、
「それにしてもそんなに私の話は魅力がないのかな。4月から講義してきて、『慣れ・馴れ』が出てきたからなのかな?」
と思いましたが、ふとある考えが浮かびました。
「もしかしたら学生は、教壇の上の世界は、テレビの画面の向こうのように感じているのではないか?」
それだけ一方通行の講義ということかもしれないけど、大学での講義のあり方や、コミュニケーションのとり方が変わってきているのではないかと、考えさせられました。
その後、『新・にほんご紀行』(山口仲美)という本を読んでいたら、233ページに、
「中国人は人前で平気で大口開けてあくびをする」
と書かれていました。もしそうだとすると、
「日本人が中国人化している」
のかもしれません。
この話を、先輩の辛坊次郎さんにしたところ、
「それは単に授業がおもしろくないからだろ。おれだったら30秒に1回は笑わせる。そうでないと、みんな寝てしまう」
って・・・どんな学生だ!まったく、「寄席」じゃないんだから・・・。