新・ことば事情
3845「幸夫人」
去年12月の用語懇談会放送分科会での話です。鳩山総理の夫人・幸さんの、
「幸夫人」
という表現について、
「正しくは『鳩山由紀夫夫人幸さん』ではないか」
という意見が寄せられました。これについて各社の委員の見解は、
「鳩山政権誕生以降、『幸夫人』(みゆきふじん)を情報番組を中心に連発している。『鳩山夫人』や『鳩山由紀夫夫人』ならわかるが、あえて言うなら『幸さん』(みゆきさん)ではないか。」
「『真珠夫人』などが出てから『夫人』の使い方が変わったのかも知れない。別の人物だが、『真紀子氏』というのもよく出てくる。『氏』は名字。氏なのだから『田中真紀子氏』ならわかるが、『真紀子氏』がよく使われている。」
「言葉は変わるもので、誤用がいつのまにか正しくなることもあるが、放送が、まして全国ネットの番組が率先して、毎日連発しているのはどう考えてもおかしい。『幸夫人』はやめてほしい。」
と「幸夫人」に否定的な意見が出る一方で、関連の(?)昔の話(現在にもつながりますが)で、
「その昔『デビ夫人』がおかしいと思った。『スカルノ夫人』ではないのか?」
という意見が出たら、
「あれは『第○夫人』というふうにたくさんいる。本妻の『スカルノ夫人』は一人だけなので、仕方がないのでは・・・」
の声もあり、また、
「いまや『デビ夫人』は、『叶姉妹』のような『芸名』では?」
という声も。(「デヴィ夫人」とも表記されているようです。)
そして、
「目くじらたてなくても・・・」
という、ある意味、真っ当な意見も出て、さらに、
「(野村前監督夫人の)『沙知代夫人』もあった」
「ファーストレディーに個性がある(キャラが立っている)場合は、ファーストネームで呼ばれることがある。クリントン大統領夫人時代にはヒラリー・クリントンは『ヒラリー夫人』と呼ばれていたし、現在のオバマ大統領夫人も『ミシェル夫人』と呼ばれている。『イメルダ夫人』もあった。『○○夫人』がおかしい、と言うほうがおかしいと思う」
と積極的に「幸夫人」を押す声も。さらに現状の分析として、
「ニュース原稿では『妻の幸さん』だが、『首相動向』では『幸夫人』も出てくる。オバマ大統領の『ミシェル夫人』も使っている」
という意見も出るなど、まさに談論風発!最近の用語懇談会で一番盛り上がったんじゃないかと思うぐらいでした。それだけ賛否両論ある表現なんでしょうね、「幸夫人」。
そう言えば「鳩山政権のハネムーン期間」(100日間)が過ぎてからは、あまり取り上げられていない気がしますね。(2010、2、9)
(追記)
2010年4月27日の朝日新聞朝刊に、こんな見出しが。
「最近見ないね幸夫人」
しっかり「幸夫人」、使っていました。なんだか童謡「さっちゃん」の歌を思い出しました。本文を読むと、
「活動的なファーストレディー像を印象づけた鳩山幸夫人」
とフルネームに「夫人」を付けていました。