新・ことば事情
3839「『この国が』のアクセント」
「情報ライブミヤネ屋」火曜レギュラーの松尾貴史さんから、番組終了後にメイク室で質問を受けました。
「道浦さん、『国が』のアクセントは『ク/ニガ』と『平板アクセント』ですよね?最近、『ク/ニ\ガ』という『尾高アクセント』をよく聞くんだけど。道浦さんもさっき、そう読んでらっしゃいましたよね?」
あ!とそこで初めて気付ききました。たしかに、わたくし、さきほど
「ク/ニ\ガ」
というアクセントで読みました。文章は、
「もし、この国が非常事態に陥った時」
というもので、「この国が」を、
「コ/ノ・ク/ニ\ガ」
と読んでしまいました。が、これは複合語的なアクセント変化なのではないか?と思いましたが・・・あまり自信はありません。
そこで、「この」を付けてその後に続く「2音節の言葉」で「く●」というものを書き出してみました。
くあ くい くう くえ くお
くか くき くく くけ くこ
くさ くし くす くせ くそ
くた くち くつ くて くと
くな くに くぬ くね くの
くは くひ くふ くへ くほ
くま くみ くむ くめ くも
くや くゆ くよ
くら くり くる くれ くろ
くわ
この中で、意味を持つ名詞になるものを選び、その中で「尾高アクセント」のものを太字で、更に「この」を付けると、もともと単独では「平板アクセント」なのに「尾高」アクセントになるものを太字で記しました。「くに」と「くそ」しかありませんね。うーん、あまり何の解決にもならんか。
最後の手段、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんに質問メールを送ったところ、すぐに返事を頂きました。
『NHKアクセント辞典の巻末p.189の[注意①]に、簡単にではありますが言及があります(「国」の例は挙がってませんが)。要するに、単独では平板型である名詞のうち、いくつかのものは修飾語が来ると尾高型になることがあるという内容です。同様の記述が、秋永一枝『新明解日本語アクセント辞典』巻末p.28の注③にあります。』
おお、そうだったのか!ちゃんと『アクセント辞典』に載っているケースだったのですね!塩田さん、ありがとうございます!これで松尾さんにも返事が出来ます!
一応『NHK日本語発音アクセント辞典』の巻末の該当の部分を書き写しますね。
【注意①】「日」、「上」、「下」、「家(うち)」、「人」、「所」のような平板型名詞の前に、平板型、尾高型の修飾語が来た場合、全体を尾高型に変化させ、助詞が下がって付く傾向ある。(助動詞も同じ)<※無声化の印は省略>
コ/ンナヒ\ニ、ア/クルヒ\ワ、シ/ッパイシタヒ\ニワ、ヤ/マノウエ\ニ、ミ/ズノウエ\ニ、ヤ/ナギノシタ\ニ、ト/ナリノウチ\カラ、オ/トコノヒト\ガ、ア/ンナトコロ\ニ、オ/ナジトコロ\エ
内容的には私が考えていたことと近かったのですが、学者の研究でも、実体として認知されていたということですね、私は納得しました。