新・ことば事情
3838「けが人は『ありません』か?『いません』か?」
先日、夜のニュースを家で見ていたら、「JR和歌山駅でコンクリート片が天井から落ちてきた」というニュースを伝えていました。その原稿の読みで、
「けが人は、"いません"でした」
と2度伝えていました。それを聞いて私は、
「けが人は、"ありません"でした」
ではないか?と疑問に感じ、報道のデスクにすぐに電話しました。
「いる、いない」は「(その場の)存在」で、「ある、ない」は「出現」でしょう。けが人は「出る・出ない」なので、「出現」で表現するのだと思います。つまり、これにより、
「この事故によるけが人は1人ありましたが、カメラマンが駆け付けた時には、いませんでした」
という違いの「使い分け」ができます。デスクは、
「それは全然気付きませんでした。以後気をつけます」
と言ってくれましたが、一応、過去の原稿をチェックしてくれました。それによると、過去1年間の原稿で、「ありませんでした」と「いませんでした」が、
「ほぼ同数」
だったということが分かったのです!私がストレートニュースを読んでいた2年ぐらい前までは、「いませんでした」は皆無だったと思うので、この1、2年で急速に「いませんでした」という表現が増えたのではないでしょうか?
デスクが泊り記者とアナウンサーに聞いてみたところ、
「けがはある、けが人はいる、だと思います」(2年生記者)
「すいませーん!ぜんぜん気がつきませんでしたー!」(原稿を読んだ7年生アナウンサー)
そしてデスクは"YTV"の"放送"原稿を検索してくれました。すると、
「驚愕の結果が!」
けが人は 「...ありません」 「...いません」
2004 7件 0件
2005 29件 4件
2006 25件 7件
2007 16件 14件
2008 19件 15件
2009 16件 21件
2004年は0件だった「いません」が、ついに去年逆転!ちなみにABC(朝日放送)の同じニュースも「いません」だったと、デスクが報告してくれました。
うーん、やっぱり「言葉」って動いているんですね!
で、私は今後も「けが人はありませんでした」で行こうと思います。
実はこれと同じテーマで、以前書いています。「平成ことば事情3234けが人はいない?ない?」もお読み下さい。