新・ことば事情 3827
3827「南国ハワイ」
1月13日の「ミヤネ屋」の原稿をチェックしていたら、日米外相会談のニュースの中で、
「日米の外交責任者たちが会った場所は、南国ハワイ」
という表現が出てきました。
「南国ハワイ」
ええ?「ハワイ」は確かにあったかいだろうけど、「南」じゃないじゃない。日本から言うと「東」でしょ。それでも「南国」と言っていいの?という疑問が。
「南国」と言うとやはり「土佐」でしょう・・・(わかる方だけわかってくれれば・・・「♪南国土佐をあとにして」という歌があったのです。)というか、「国内」のイメージですよね、南国は。「宮崎」なんかも「南国」っぽいですね。高知県には、
「南国(なんこく=濁らず)市」
があるぞ。
「ハワイ」の枕詞で一番有名なのは、
「常夏の島(・ハワイ)」
ですね。「常夏」=「とこなつ」と読みます、念のため。原稿では「南国」の代わりに、
「太平洋の楽園・ハワイ」
としました。「太平洋の楽園」は、本当は「パプア・ニューギニア」とか「タヒチ」の冠なんでしょうが、「南国」よりはイメージが湧くかなと思って変えました。
ネットで「南国」を検索してみると、
「南国交通」=鹿児島市
「南国市」=高知県
「南国酒家」=東京・原宿
「ダイビングショップ南国」=神津島
「南国殖産」=鹿児島
「南国百貨店」=沖縄
そして「南国とは」で検索したら、まさにそのサイトが登場。「教えて!goo」で「南国ってどこを指す?」というものです。それを読んでも、はっきりとは答えが出てこない。ただ、昔は確かに方角の「南」の国をさしたのが、「南=暖かい」ということで、
「暖かい国(地方)」=「南国」
という意味が生じたのではないか、というようなことも書かれていました。
辞書引きましょう。『広辞苑』
『広辞苑』=「(1)南方の国。また、南の土地(2)江戸時代、品川遊郭の異称。吉原を北国というのに対していう。南駅。南極(なんごく)。」
へーへーへー(古い!)なんと江戸時代は「品川遊郭」が「南国」だったのか!『広辞苑』、こんなことまで載せて、えらい!
『明鏡国語辞典』=「南方の暖かい国。また、南方の暖かい地方」
うーん、昔は日本国内でも「国」と言ってたけど(「武蔵の国」とか「伊賀の国」とか「信濃の国」とか)、今「国」と言えば「日本、アメリカ、イギリス、ドイツ」のような「国」だから、そこの解釈の違いもあるでしょうね。
*『精選版日本国語大辞典』=「(1)南方の国。また、南方の土地。南州。(2)江戸、品川遊里の異称。吉原を北国というのに対していう。南州。」
*『デジタル大辞泉』=「(1)南方の国。南方の地方。南州。(2)(江戸城の南にあったところから)品川遊郭の異称。新吉原の「北国」に対していう。南。南州。」
大きめの辞書には2つ目に「品川遊郭」が載っているんですね。
*『三省堂国語辞典』=「あたたかい南の国。(例)南国土佐」
そうだよねえ、「南国」と来れば「土佐」だよねえ。じゃあ、南国市は、
「南国(なんごく)・南国(なんこく)市」
かな?
*『新明解国語辞典』=「南の暖かい国(地方)」
シンプル。
*『新潮現代国語辞典』=「南方の国。また、南方、赤道近くの地方。」
おお、新たな記述は、
「赤道近くの地方」
これだと「南」じゃなくても(まあ、「赤道」は日本よりも緯度は低い、つまりそういう意味では「南」ですが)「南国」が使えますね!「ハワイ」は北緯20度ぐらい、東京・大阪は北緯35度ぐらい。ハワイも「南国」でいいのかも。
そして、去年11月に出たばかりの『岩波国語辞典・第7版』は・・・載ってない!見出しになっていない!なんで?何ではずしたの?ショック。今は使われない言葉と判断したんでしょうか?どうなんだろうか?
Google検索では(1月25日)
「南国ハワイ」 = 2万2000件
「常夏の島ハワイ」 =320万0000件
「太平洋の楽園ハワイ」= 3万1700件
「太平洋の楽園タヒチ」= 9万0100件
「太平洋の楽園ニューカレドニア」=1万8600件
でした。やっぱり「ハワイ」は圧倒的に「常夏の島」でしたね。
コメント
「夢のハワイ」というのが327万件出ました。
昔の「アップダウンクイズ」のせりふです。
投稿者: 小駒勝美 日時:2010年04月06日(火) at 17:52