新・ことば事情 3821
3821「『手を染める』と『足を洗う』」
知り合いの小学校の先生から、
「子供からこんな質問を受けたんだけど・・・」
と質問されました。
「物事を始める時は、『手を染める』というふうに『手』を使うのに、辞める時は『足を洗う』となぜ『足』になるの?」
というものです。
うーん、何となくイメージは分かるけど・・・と「宿題」にさせてもらいました。その「宿題の答え」をここに書きますね。
「手始め」「手付け」「手を付ける」「手懸ける」
など、何かを始めるときには、人間はまず、「手」で物事にタッチします。その後、それにどっぷりと全身・からだ全体が浸かって、
「さあ、やめよう」
という時は、やはり「足」から出ないと抜け出せません。「手」だけ出ても、身体の残りの部分が残っていては、
「やめた=足抜けした」
ことにならないでしょう。熱いお風呂に入るときに、最初、「手の指の先」をちょっとつけて熱さの具合を試しますが、お風呂にどっぷり肩までつかったあとに出るときは、「足から」浴槽の外に出ますよね。それと同じかな。
「手を染める」
は、おそらく染色の仕事あたりから出た言葉ではないでしょうか?また、
「指を染める」
という表現もあり、
「一指(いっし)を染める」
という言葉もあるようです。これの意味は、
「少しだけ関与する」
また、「足を洗う」と同じような意味では、ほかに、
「手を引く」「手を切る」「身を引く」
もあります。ただ「足を洗う」は、
「悪事から身を引くこと」
で、「いいこと」をやめる時には使えません。
こんなところでいかがでしょうか?