新・ことば事情 3814
3814「一般の方」
『週刊文春』の2009年6月11日号、名物コラム『夜ふけのなわとび』第1121回の中で、林真理子さんが、
「一般の方」
という表現について批判していました。
「ダウンタウンの松ちゃんの結婚報道にがっかりした」
という書き出しで、その「がっかりした理由」は、
「相手は一般女性」
ということで「報道を封じ込めようとしたから」だそうです。自分が結婚したときは、夫となる人は「一般人」だったのに、そーっとしておいてくれなかった、というようなことも書かれていました。
実際は、その女性は「お天気キャスター」だったので(その時はもう辞めて「一般の方」になっていたそうですが)、「一般の方」と言ってよいのやら、というところもありますし、「報道を封じ込めようとした」意図があったのかどうかは、議論の余地があると思いますが、たしかにここ数年(?か?)、芸能人の結婚のお相手をさして、
「一般の方」「一般の男性(女性)」
という表現がよく出てきます。
お笑いの「サンドイッチマン」の片方の人が結婚したときも、
「一般人女性と」
でした。俳優の佐藤隆太さんが結婚を発表したときも、相手は、
「一般女性」
でした。確かに多いですね。
2009年12月29日放送の「ミヤネ屋」芸能スペシャルで取り上げられた、芸能人の熱愛報道で、お相手が「一般の方」だったのは、
西川史子=「一般会社員」と婚約
奥菜恵=「一般男性」とデキ再婚
佐藤隆太=「一般女性」とデキ婚約
「デキ婚」は、「できちゃた結婚」の省略された形です。何でも省略するなあ・・・。
「一般人と結婚」と報じられるのは「有名人」のことが多いですが、その「一般の方」も、「年収1億円」
となると、「一般」の方と呼べるのか?という問題も出てきます。どう考えても「一般」の人ではないですね、年収1億円は。でも社会的には「一般」の方になるのかな?一体全体(なんだか古い表現)何を持って「一般の方」としているのでしょうか?・・・・お金ではないのなら、
「有名か、有名でないか」
ということでしょうか?
「報道を封じ込めようとした」かどうかは別にしても、少なくともこの傾向は、昨今の
「プライバシーの保護」
の社会的な動きと連動していますね。「取材拒否」なんかも関係あります。
しかし、もっと昔だったら、「一般の方」という言い方でなく、
「一般人」
だったかもしれません。しかし「一般人」では「何かちょっと見下した感じがする」ので、
「一般の方」
と、敬意を表す表現になっていますね。「一般人」は更に略されて「パンピー」なんて呼ばれたりもしましたしね(一方的に)。
私がこのことを書くための「メモ」として、自分のパソコンに、
「一般人女性」
のタイトルをつけてケータイメールを送ったら、なぜか勝手にパソコンが、
「SPAMメール」
に分類していました!迷惑メール、エッチメールに「一般人女性」という言葉がよく使われているのでしょうね。なんだかなあ・・・。