新・ことば事情 3783
「撃沈させました」
トヨタプレゼンツ・クラブワールドカップ(CWC)は、今年は中東のアブダビで開かれました。「トヨタカップ」時代から長年、東京で開催してきたので、ちょっと寂しい気がします。時差の関係もあって、放送はほとんど深夜でした。
決勝は、欧州代表のスペインのバルセロナが、劇的な逆転劇。今年の世界最優秀選手でアルゼンチン代表のメッシの決勝ゴールで、南米代表・アルゼンチンのエストゥディアンテス(スペイン語で「学生」の意味)を2対1で破り、初優勝を遂げました。エストゥディアンテスには、メッシと同じアルゼンチン代表で「小さな魔法使い」と呼ばれるベロンがいましたが、一歩及びませんでした。いい試合でしたね、と言っても後半の15分、バルセロナがリードされているところまで観て(もうそれで夜中の2時15分)、寝てしまったのですが。一番いいところを見逃した!
その中継の中で、実況アナウンサー(日本テレビの藤井アナウンサーでしょう)が、バルセロナに対するコメントで、
「レアルマドリードを撃沈させました」
と言っているのを聞いて「おや?」と思いました。これは正しくは、
「レアルマドリードを撃沈しました」
ではないでしょうか?でも思わず「撃沈させた」と言いそうなのも、なんとなくわかる気がします。
「撃沈」の主語は、この場合「バルセロナ」であり、「撃沈」の意味は、
「撃破して沈める」
なのですが、
「撃破して沈没させる」
というふうにもとれます。この中にある「して」と「させる」は、「して」は普通の文(肯定・叙述分)ですが「させる」は「使役」のように見えます。それがねじれた状態で1つの「撃沈」という言葉の中に入っていると考えると、「撃沈」を、
「撃破され沈没する」「撃破され沈む」
だと、
「逆のねじれ状態」
だと考えると、
「撃沈させる」
という表現も、間違いとは言えないのではないでしょうか。
ただ、そういった使い方が従来されていたかどうかと言うと、「?」が付きます。
その辺が「微妙に違う」と感じたよりどころなのかもしれません。
そうそう、バルセロナがメッシ選手の活躍で優勝したことをさす四字熟語、知ってます?・・・・・・メッシ奉公。