新・ことば事情 3774
「一の読み方」
ご存じのように、日本語の数字の読み方には「和語系」と「漢語系」があります。これに「英語系」も最近は交じるようになっていますが、主流は和語・漢語の2つの系統です。
これらは後ろに来る言葉(助数詞など)が漢語か和語かによって決まることが多いのですが、例外もあります。ニュース原稿などでは、原則「一」と書いてあれば「イチ」と読み、「ひと」と読ませる場合は漢字を用いず、ひらがなで「ひと」と書くと、読み間違いを防げます。でも、そういったルールが必ずしも厳密に運用されているわけではありません。そこで、思いつくままに「一」の付く言葉の「イチ」と「ひと」の分類をしてみました。「思いつくままに」なので、網羅はされていませんが。あ、『新聞用語集2007年版』の「放送で標準とする読み方例」を読んで集めてみようかな。では、順不同で・・・。
ひと
一幕<以上『新聞用語集2007年版』より>、一役、一休み、一区切り、一時(ひととき=平仮名書きが原則)、一幕、一苦労
イチ
一隅(を照らす)、一見の客、一見(イッケン)、一言居士、一期一会、一個人(イチコジン、イッコジン)、一言一句、一言もない、一日千秋、一日の長、一段落、一縷(イチル)の望み、一蓮托生、一家言(イッカゲン)、一山(イッサン)の僧侶、一矢(イッシ)を報いる、一親等(イッシントウ)、一世一元(イッセイイチゲン)、一世風靡(イッセイフウビ)、一世一代(イッセイチダイ)、一対(イッツイ)、一途(イット)をたどる<以上『新聞用語集2007年版』より>、
一石(イッセキ)を投じる、一席(イッセキ)、一朝一夕(イッチョウイッセキ)、一時代、(氷山の)一角(イッカク)、一時(イチジ・イットキ)、一騎(イッキ)当千、一人当千、一罰百戒、一粒万倍、一汁一菜、一石(イッセキ)二鳥、一人会社、一兵卒(イッペイソツ)、一衣帯水
というふうに、気長に言葉を集めていこうと思います。しかし、「ひと」という読み方のことば、『新聞用語集』の「放送で標準とする読み方例」には「一幕」ただ1語しか載っていないんですね。それと、この中で読み方を間違う人が多いのは、
「一段落」
正しくは「イチダンラク」ですが、「ひとダンラク」と間違って読む人が多い気がします。あと「一幕(ひとまく)」を「イチマク」と読んじゃうとか。そのぐらい気をつけておけばいいかな。
(2009、12、17)
(追記)
その後、気付いたもの。
ひと
ひと汗流す、ひと味違う
イチ
一時代を築く
~「ひと汗」「ひと味」の「ひと」は、平仮名で書いた方がいいですね。
それと『共同通信記者ハンドブック第9版』の「ひと」を引いてみたら、漢字で書く「一」と書く場合と平仮名で「ひと」と書く場合の用例が載っていました。
*「一」(主に漢字に続く場合)一汗、一荒れ、一打ち、一思い、一声、一言、一塩(魚・野菜に塩をふりかける)、一筋、一続き、一(っ)飛び、一握り、一寝入り、一眠り、一昔、一休み <注>文脈によって「ひと汗」「ひと思い」「ひと声」「ひと昔」などと平仮名書きを活用。
*「ひと」(主に平仮名に続く場合、副詞)ひとくさり、ひところ、ひとしきり、ひとたび、ひとたまり、ひとつまみ、ひととせ、ひとまとめ、ひともうけ、ひとわたり<注>「昭和一けた生まれ」「青春の一こま」などは別。
とありました。「ひと」のところに書いてある「(主に平仮名に続く場合、副詞)」というのは目安としては分かりやすい気がします。