新・ことば事情 3772
「使いと遣いの使い分け」
毎日、『情報ライブミヤネ屋』の字幕スーパーのチェックをしています。そうするといつも同じようなところで悩むことが出てきます。その一つが、
「使う」と「遣う」の「つかいわけ」。
たとえば、「気をつかう」の「つかう」はどっち?
×「気を遣う」
○ 「気を使う」
なんですねえこれが。「遣」は「気遣い」「金遣い」「息遣い」「無駄遣い」など主に
「名詞形」
に使います。これに対して「使」は「使い道」「使い手」「気を使う」「子供の使い」など主として
「動詞形」
で使うのです。この場合は「動詞形」なので「気を使う」。しかし、
「気遣い」
からの類推で、間違うケースが、結構多いのです。先日も、お笑いコンビ「オードリー」のコメントにかぶせたスーパーで、
「気を遣うじゃないですか」
と字幕をつけていましたが、
「気を使うじゃないですか」
に直しました。しかし、なぜか元の形がオンエアーに出てしまいました。今回は「動詞」なので「気を使う」が正しかったのに。(事前に直したものが、また直されてしまった。気を「使い」過ぎた?)
「つかう」の漢字の使い分けは、『新聞用語集2007年版』によると、
(A)「使い・使う」=「一般用語・主として動詞形」
上目を使う、お使いに行く、仮名を使う、漢字を使う、気を使う、現地の言葉を使う、心を使う、子どもの使い、声色を使う、大金を使う、使い切れぬほどの金額、使い込みが発覚、使い捨て、使い手、使い道、使い分け、道具を使う、道路建設に使う予算、人形を使う(人形浄瑠璃では「人形を遣う」)、人使いが荒い
(B)「遣い・遣う」=「限定用語・主として名詞形」
息遣い、上目遣い、仮名遣い、心遣い、小遣い銭、言葉遣い、人形遣い、筆遣い、無駄遣い、文字遣い、両刀遣い
<注>「剣術使い」「忍術使い」「魔法使い」「猛獣使い」は慣用として「使」。
となっています。「お金の場合には『遣う』」ということではなく、「動詞形」なら「使う」、「名詞形」なら「遣い」というのを、原則として覚えておくといいのかもしれません。
それにしても、
「『剣術使い』『忍術使い』『魔法使い』『猛獣使い』は慣用として『使』」
というのは、ややこしいですね。