新・読書日記 2009_221
『ちびくろさんぼのおはなし』(へれん・ばなーまん さく・え、なだもとまさひさ やく、径書房:1999、5、20)
「ちび黒サンボ」です。もう20年近く前ですか、「ちび黒サンボは、黒人差別だ!」と、黒人ではない大阪・堺の家族が組織する団体に糾弾されて岩波書店が絶版にしてしまい、各出版社が「右へ倣え」になって、「ちび黒サンボ」が消えてしまいました。その後、そういう風潮も薄れたので、「普通に考えたら、OKやろ」ということになって「復刊」したのが、もう10年前なんですね。20世紀末にようやく、イーブンの状態になったと。
うちの子どもに読んでやっていて、「あ!そうか!!」と思ったのは、当然「さんぼ」はイギリスの植民地時代の「インド」で、その「さんぼ」から傘や靴や服を取り上げる「トラ」は、いわゆる「列強」諸国であると。ということは、その「トラ」がお互いの覇権を争いながらグルグル回ってバターになっちゃって消滅する、というのは「帝国主義の終焉」を意味しているのだなと。そうして「帝国主義→資本主義(パックス・アメリカーナ)」の後に来るのは、「インド」であると。『BRICs』ですね、つまり。そこまで見通した物語なのかなあ、と深読みしてしまいましたとさ。なだもと先生は京都産業大学先生でしたね、たしか。
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