新・ことば事情 3800
「チクロ」
2009年10月14日の日経新聞夕刊の、ベタ記事(1段)の見出しは、なんと言うこともないものでした。
「輸入チョコ巡り 大阪市回収命令から禁止添加物検出で」
フーン・・・と思いながら記事読むと、スペインから輸入したチョコレートに、日本では使用が認められていない人口甘味料、
「サイクラミン酸(通称チクロ)」
が検出されたと書かれていました。そこに目が釘付けに。
「チクロ!あのチクロ!」
そう、わたしたちが小学校低学年の時に、それまでは使用が許されていた「チクロ」に発がん性があるということで、急に「チクロ入りのお菓子」は販売が中止されたり回収されたことがありました。1968年か69年だったのではないでしょうか?確か小学校2年、8歳だったな。そうすると1969年か。アポロが月に到着した頃。
それは身近なお菓子に関することだけに、子供たちにも結構ショックな社会的なニュースでした。(そうか、あの「チクロ」、正式には「サイクラミン酸」と言うのか。たぶん「cyclomin」とか書くのかな、それをローマ字読みしたから「チクロ」なのかも。)
そんなある日、友達のF君の家にお邪魔して、おやつを食べていた時のこと。とってもおいしいお菓子でした(何のお菓子かは忘れましたが)。F君と争うようにムシャムシャ食べていて、何気なくその袋を見たら、そこにはなんと、
「チクロ」
の文字が!急にお菓子の袋に伸びる手が止まりました。
「どうしたん?食べへんの?」
と不審そうに私に聞くF君に、
「ほら、ここ・・・」
と、私が袋の文字を指さすと、
「あ・・・・チクロ・・・・」
F君も、お菓子の袋に伸びる手が止まりました。ど、どうしよう、もう随分食べてしまった・・・・ガンになる・・・がーん。そんな気持ちでした。
ちょうどその時、買い物に出かけていたその家の(F君の)おかあさんが帰ってきました。そしてニッコリ笑って、
「あら、いらっしゃい。お菓子、食べてね」
と言うではないですか!(鬼か!)私はもじもじして言いにくそうに、
「うん・・・でも・・・ここに『チクロ』って・・・」
と言うと、おかあさんは袋を見て、笑いながら、
「ああ、これは『チクロは含有していません』って書いてあるのよ。チクロは入ったないから、大丈夫!」
ああ、良かった!小学2年生には、「含有」は読めなかったのです。「ガン有」じゃなくて本当に良かった。それからは安心して、2人でまたムシャムシャとお菓子を頂いたのでした・・・・。
その「チクロ」が、40年ぶりに目の前に文字として現れた!ベタ記事を読んで、ちょっと感動したのでした。F君、元気かな。
(2009、12、29)
*年内に「3800回」に到達しよう!と、先週決めて、頑張りました。何とか到達できました!ネタはあるけど、書く時間がない状態が続いています。来年はとりあえず「4000回」到達が一つの目標です。よろしくおねがいします!