新・ことば事情 3796
「『にと』を追うもの」
12月28日の日本テレビ『スッキリ!!』を見ていたら、男性ナレーターの読みで、
「二兎を追うもの一兎も得ず」
というフレーズが出てきました。それが、
「二兎を追うもの"一頭"をも得ず」
に聞こえたので「え!?」と思いました。時々、こう勘違いしている人がいますが、もしかしたら私の聞き間違いかもしれません。
しかしこういった間違いが起こりやすい要素が、この文にはあります。
というのは「二兎(にと)」「一兎(いっと)」というような数え方に馴染んでいないことが、まず挙げられます。「兎(うさぎ)」の音読みが「と」だと知らないケースもあるでしょう。このことわざを「耳から覚えた場合」は、特に。
それともう一つは、「二兎」「一兎」の後に助詞の「を」が来ているので
「二兎を(ニトヲ)」
が、
「二頭を(ニトーヲ)」
に聞こえやすい。「ト」の伸ばし具合が人によって違うので、普通に「兎(ト)」と言ったのを、短く伸ばした「頭(トー)」だと思ってしまうことがありそうなのです。
しかし、後半の「一兎も得ず」は「一兎(イット)」のあとが「も」ですので、そういった種類の間違いはなさそうなのですが、この日の「スッキリ!!」のナレーターさんは、
「イットーヲモ」
と「を」を入れていました。文の意味は「を」を入れて強調されただけで、大意は変わりません。それでそのように「カスタマイズ」されたのかもしれません。
「を」をめぐっては、
「~せざるを得ない」
という言葉を、
「~せざるを、おえない」「~せざる、おえない」
だと思っている人、結構いますよね。これも、目から見た文章で言葉を覚えたのではなく、耳から覚えた言葉を使っていることと、「を(お)」が、その前の長音の「お」とつながって区別されにくいというケースに起きているのではないかなと、思いました。