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『道浦TIME』

新・ことば事情 3794

「ばっかじゃなかろか」

2009年4月23日の「情報ライブ・ミヤネ屋」で、東北楽天イーグルスの野村監督(当時)が、

「ばっかじゃなかろか」

と言っている映像が流れました。意味は、

「バカじゃないの」「あほくさ」

みたいな感じだと思います。

実はこの言葉、私は子供の頃に聞いたことがあります。うちの母がよく口にしていました。

ちなみにうちの母は、野村監督とまったく同学年の、昭和10年(1935年)生まれ。

そこで、その世代が感受性の強いときに流行った言葉(流行語)ではないか?と調べてみると、実はこれは、

「トニー谷が流行らせた言葉」

であることがわかりました。わかりました・・・って、私が知らなかっただけなんですが。

梅花女子大学の米川明彦先生の編著による『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(三省堂)180-181ページによると、これは、

「トニーグリッシュ」

とひとくくりにされる流行語で、1953(昭和28)年に流行したとのこと。野村監督、うちの母が、高校3年の時ですね。「トニーグリッシュ」の説明を書き写します。(漢数字は洋数字に変換)

*トニー谷が使った日本語と英語のごちゃ混ぜのことば。:『地上』(195312月号)に「いままたトニー谷が、『レディース・エンド・ジェントルメン・エンド・オトッチャン、オッカチャン・・・』で司会をはじめ、英語日本語混用の新機軸で売り出した。彼の常用する『・・・ざあんす』『・・・ざあんしょ』などは、むかし流行った『ザーマス』言葉の転用であるが、巷間、そうとう流行っている。『胸が、ドキリンコ』とか『うれしくって、ホンワカホンワカ』などと新語を造りだしている」と例が出ている。

*このほか「おこんばんは」「ネチョリンコン」「さいざんす」「ばっかじゃなかろうか」「家庭の事情」なども流行語になった。朝日新聞(1955715日『天声人語』)に「"家庭の事情ザンス"などと妙なことを言って笑わせるトニー谷」とある。

ということで、相当、流行語を作り出していたのですね、トニー谷は。トニー谷で私が知っていたのは、読売テレビ(当時=子供の頃は、どこのテレビ局の制作かなんて、もちろん全然気にしていなかった)の『アベック歌合戦』の司会で、

「♪あなたのお名前、なんてーの?」

と言っていた"ヘンなおじさん"のイメージしかないんですが。

やはり若い頃にそうやって覚えた言葉は、何かの折りに、フッと出てしまうもんなんですかねえ。

 

(2009、12、28)

2009年12月29日 17:58 | コメント (0)