新・ことば事情 3793
「2010年問題」
朝日新聞のSさんから、久々にメールが来ました。そこにはこう書かれていました。
「新聞界の2010年問題、というのをご存じでしょうか」
え?何それ?知りません。ちょうど10年前に「2000年問題」というのはありましたが。
Sさんによると、「2010年問題」というのは、「日本語の問題」なのだそうです。ええい、じれったいな。つまり、
「新聞における西暦の表記が変わった」
ということだそうです。知ってましたか?私はちっとも知りませんでした。Sさんによると、
朝日新聞は11月の終わりから紙面上いっせいに、これまで西暦の年を表すときには、
「98年」「09年」
と書いていたものを、基本的に「初出」の場合には、
「1998年」「2009年」
と書くようにしたというのです。新聞は「縦書き」で、数字は2ケタまでは1文字に入りますから「09年」と書くと「2文字」、しかし「2009年」と書くと「5文字」になってしまう。1文字1文字が貴重な紙面で、ひとつひとつの記事で「09年」を「2009年」にすれば、ずいぶんとスペースを食ってしまうので、本来ならこんなことはしたくないはずなのです。それをあえてそうした理由はと言うと、最近になって、
「10年3月期の業績見通しは」
「13年以降の排出枠が」
「23年までには開業したい」
といった記事が頻出するようになり、人物の経歴等でも、
「30年生まれ」「45年から文筆活動」
などというものが出て来るようになったのですが、「ゼロ(ゼロ)年代」の
「 01~09年までは、誰が見ても『西暦』」
なのですが、
「13年とか23年とか45年では、西暦だか昭和だか大正だか平成だか区別がつかない」
という状態に陥ってしまうことに気付いたので変更したのだそうです。なるほどー。
朝日新聞は2001年に、紙面の文字を「漢数字」から「洋数字」に変更したのですが、漢数字時代(つまり20世紀)には、西暦は「八八年」、和暦(元号)は「六十三年」と表記し、単位語「十の有無」で区別をしてきたとのこと。漢数字は、そういう意味では便利だったのですね。
この「初出で、西暦をきっちり省略しないで書く」というのは、ほかの新聞では、読売新聞が、もう少し早くから始めていたようです。毎日新聞が、朝日とほぼ同じ時期、産経新聞は(数年前に洋数字に変わりましたが)、「西暦」は使わずに「元号」なので、こういった問題は起きていないみたいですね。やはり「新年度(2010年度)予算などの話」が出てき始めたので、気になったのかも・・・とSさんは見ているそうです。
ちなみに先日、森繁久弥さんが亡くなったときに、朝日新聞が、
「13年生まれ」(=1913年生まれ)
と書いたら、読者から、
「違うだろう、そんなに若くない」
という意見を多数もらったそうで、これは、読者が、
「昭和13年生まれだと思った」
人が多かったからなのでしょう。中には、
「大正13年生まれと思った」
方もいらっしゃったのでしょうね。世紀をまたいで、しかも3つもの「元号」を越えてくると、なかなか難しくなっちゃうものなんですねえ。
その後、新聞をチェックしていたら、確かに「見出し」などでも「4ケタの西暦」を記しているものが目立つようです。2回目以降に出るときは「2ケタ」で「1マス」に収まるようにしているようですが。気付かないところで、新聞も変わっているのですね。