新・読書日記 2009_240
『「キング」の時代~国民大衆雑誌の公共性』(佐藤卓己、岩波書店:2002、9、25第1刷・2005、9、25第5刷)
講談社を作った野間清治。彼が生み出した総合雑誌『キング』の盛衰を描くことによって、日本において「国民」「大衆」というものが形作られた過程を描き出す意欲作。随分前に購入してはいたのだが、分厚いしなかなか読めなかった。しかし実は、著者の佐藤卓己先生の講演会・・・というか勉強会に11月下旬に出席する幸運に恵まれたので、「その勉強会までに、読んでしまわなくては!」と自らにムチ打ち、読みました。462ページもあって分厚いので、ちょっと見ただけでは気が引けてしまう感じが・・・。表紙の絵柄は岩波にしては親しみやすいのだけど、中身は「論文」ですからね。
いくつか気に留まった部分の抜書きを。
*1931年7月20日『清く明るく正しき新聞』をモットーに『キング』創刊。宝塚・小林一三の『清く正しく美しく』に似ているが、どちらが先なんだろうか?
*野間清治は「虞微磨麟奈」から始まる28 字の掛軸をかけていたそう。「虞」は「グラッドストーン」、「微」は「ビスマルク」、「磨」は「マコーレー」、「麟」は「リンカーン」、「奈」は「ナポレオン」を意味し、28人の英雄・偉人に朝夕思いをはせながら、自己の野心を鼓舞作興していたのだそうだ。ふーん。
*「全然誤りであり」。1937年、ゲッベルス宣伝大臣の第14回ドイツ放送展覧会における開催挨拶の訳を載せた『放送』1937年10月号に、「全然」が肯定で使われている例。
佐藤先生に初めてお会いして「『キングの時代』を、ようやく読みました!」と言ったら、
「あれ、今なかなか手に入らないらしいですよ。古本屋さんでも8000円ぐらいするらしい」
と話してらっしゃいました。ちなみに私が本屋さんで新しい本を買った時には、「定価4000円+税」でした。結構高いですね、さすが専門書!