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『道浦TIME』

新・読書日記 2009_231

『納棺夫日記・増補改訂版』(青木新門、文春文庫:1996、7、10第1刷・2009、3、10第22刷)

今年2月に『アカデミー賞外国映画賞』を受賞した映画『おくりびと』の、事実上の原作本。映画を見に行ってすぐに本も買ったが、読み出すのに時間がかかった。実は映画より先に、「漫画」を読んでいて、好きな漫画ではあった。本は「やはり、今年中には読んでおかなくては」と読み出した。この『原作』、著者は「(映画の)『原作』とは呼んでほしくない」と言っていると、確か映画のプログラムに書いてあったが、その意味はわかる気がする。「物語」や「小説」「エッセイ」と言うよりは、この文章は「詩」なのである。だから本の中には、宮沢賢治をはじめ、詩がたくさん出てくる。それは、著者本人がもともと好きだったのかもしれないが、「納棺師(夫)」という"職業的な部分"から出てきたものも関係あるかもしれない。詩は、文章を削ぎ落として削ぎ落として作る。それが死に対面する納棺夫には、よくわかるのではないか。死は、生から余分なものを削ぎ落としたものだから。「透明」でもある。

後半は詩から、哲学・宗教、思索へ。「詩作」から「思索」。そういう意味では、「書くこと」が「考えること」になっている、まさに「日記」であろう。

本の半分は「『納棺夫日記』を著して」という、その出版後の反響などについて書いている。この本の中に出てくる詩人の高見順が、死の1年前に刊行した詩集『死の淵より』の中の一編「電車の窓の外は」の表現は、吉井勇の詩『I was born』の中の表現に似ている。「糸トンボがおなかに卵を孕んでいる」という同じ表現があったように思う。どちらが先に書いたのだろう。また調べておきます!

 


star4

(2009、12、25読了)

2009年12月28日 10:17 | コメント (0)