新・ことば事情 3759
『べたつく』と『べとつく』」
よく似た言葉だけど、微妙に違う言葉・・・というものがありますよね。特に「擬態語・擬音語」には、似てるけど微妙に違うものが多いような気がします。
ということで、その「擬態語由来」と思われる言葉のビミョーな違いに関して。
「べたつく」と「べとつく」
の違いについてです。ベトちゃんドクちゃんは関係ありません。そういえばドクちゃん、お子さんが生まれたそうですね、しかも双子!うーむ、無事に生まれてよかった。
閑話休題、私の感覚で答えます。
「べたつく」は、実際に手で触ったところ、広い範囲にわたって粘着性をもって物理的にくっついてくるもの、一方「べとつく」は、湿気を含んだ梅雨の蒸し暑さ、のように、物理的にくっついているかどうか、目には見えないような感じ、かな。
あ、でも、
「男女の関係が、あつ~い!」
場合は「べたつく」ですね。
「べたついてんじゃねーよ!」
と、ひとこと言いたくなるような。(なんで標準語?)大阪弁やと、
「べたついとんのとちゃうで!」
でしょうか。これは「べとつく」は使わない気がします。
「あの二人、ベタベタしてる」
とは言っても、
「あの二人、ベトベトしてる」
とは言わないような。そうすると「ベタベタ」が密着した感じで、「ベトベト」は、
「糊で手がベトベト」
のように「液体もしくはジェル状のもの」が体に付着したような感じですかね。
ま、このぐらい考えておいて、辞書を引いてみましょう。『精選版日本国語大辞典』です。
*「べたつく」=(1)べたべたとねばりつく。べたべたする。ねばりつく。(例)「黴」(1911)<徳田秋声>「二区づいた足にべたつくやうな蚊」
(2)あっさりしたところがなく、しつこく相手にいったりしたりする。特にみだりがなしく異性にまといつく。また異性どうしが人前でべたべたする。
おいおい、「べたつく」の説明に「べたべたする」は説明になっていない気がしますが。もう一方は、
*「べとつく」=(1)ねばったりしめったりしてべとべとくっつく。べとべとする。(例)『落語。革衣(1899)<初代三遊亭円左>「朝鮮飴でベトつくんだ」
(2)あっさりしていないでしつこい感じがする。(例)今年竹(1919-27)<里見弴>枯竹「女学生らしい、べとついた文句には」
「朝鮮飴」ってどんな「飴」なんだろうか?・・・やはり、「べとつく」の方は湿気、液体が交じった感じがありますね。「べたつく」には必ずしもそれは必要ではない。でも粘り気は、水分がないと出ないわけで、その水分の量がやや多いのが「べとつく」なのでしょうか。微妙だな。
この11月20日に出たばかりの『岩波国語辞典・第7版』はどうでしょうか?
*「べたつく」=(1)べとべとねばりつく(2)人のか体にまといつく。また、きげんを取ってしきりにへつらう。
*「べとつく」= べとべとする。べとべとと、くっつく。
うーん、参考にならないな。「べたべた」「べとべと」を見ておきましょう。
*「べたべた」=(1)ものが粘りつくさま。(例)「コンロのまわりがべたべただ」(2)人にまといつくさま。(例)「べたべたした人間関係」(3)一面に塗ったり貼ったりつけたりするさま。(例)「おしろいをべたべた(と)塗りたくる」
*「べとべと」=ものが不快に粘るさま。粘りつくさま。(例)「肌が汗でべとべとする」「ジャムでべとべとの服」
これこれ、こういう用例がほしかった。これなら分かりますね。特に「べとべと」は、ものが「不快に」粘るさま、ですから「感情」が込められています。プラス評価・マイナス評価で言えば、明らかに「マイナス評価」に使うんですね「べとべと」は。
この微妙な違いを、使い分けたいです。
(2009、11、27)
(追記)
11月29日のお昼に、『ケンミンSHOW』の再放送を見ていたら、秋田弁では「ベタベタする」ことを、
「ネパカパする」「ネカパカ」
と言うと言ってました。
「納豆」や「たんぼで足がぬかるむ」ケース、また「粘着テープ」などが、
「ネパカパする」
のだそうです。うーん、分かるような、分からないような。これって「ベタベタ」が「ネパカパ」で「ベトベト」は「ネカパカ」なのでしょうか?そのあたりの違いは???うーん、わからん!