新・読書日記 2009_209
『作詞入門~阿久式ヒット・ソングの技法』(阿久悠、岩波現代文庫:2009、9、16)
いつもとは違う大阪・梅田の書店で見つけて購入。このタイミングでなぜ「阿久悠」?とも思ったのだが。定本は1972年に出されたもの。それに1997年に出たもの(「僕の歌謡曲論」)も載せている。いろいろ、ためになるお言葉が。たとえば、
「詞は文学ではない」
「歌は、レコードという音を通して相手に伝えるものだということを忘れている人が多い」「これを忘れるから、"あおい"というときに"青"を使おうか"蒼"にしようか"碧"にしようかと、つまらないところで苦労をするのである。レコードを聞く人にとって、そんなことは関係ない」
ちょっと乱暴だけど、たしかにそうだな。
「いつもまでも七・五の因習にしばられていることはないと思う」
いまは当然だけど、37年前には、なかなか言えないことだったろう。
「恋と愛の使い分けができるようになったのは、ごく最近のことではないかと思う。それまでは、ほとんど同義語として使われていたようである。」
「一人称か三人称かというのも、テクニックの一つである。」
「恋は栄養ではなくヒ素のようなものというのが、日本人の恋愛感覚なのである。だから、どうしても真正面から恋に取り組んだ歌というのは陰湿におちいりやすい。」
そうだったのか!
「『また逢う日まで』は、実は、ズー・ニー・ヴーが歌った『一人の悲しみ』という歌の、詞だけをかえたものである。メロディもアレンジも、ほとんどそのまま使った。」
ええ!そうだったんですかあ!尾崎紀世彦さんが元祖じゃないの!?
「あの人は、ひきだしが多いとか、少ないとかよくいう。作詞家であるならば、絶対的にひきだしは多くなければならない。」
アナウンサーも、同じだと思います。
まあ、とにかく、一読の価値あり!です。「岩波現代文庫創刊10周年」のようだから、祈念して「復刊」したのかもしれません。解説は、あの「鴨下信一」さん。なんだか私が読んでいる本の著者は、同じところをグルグルしているような気がします。