新・ことば事情 3749
「密かに増えた人名用漢字」
知ってる人はみーんな知っているが、知らない人はだーれも知らない。しかも知っている人がとても少ないのが、「人名用漢字の追加」です。
「人名用漢字」とは、常用漢字以外で人の名前に使うことが出来る漢字のことで、1951年5月25日に92字が制定され、その後、
*1976年7月30日に28字追加(計120字)
*1981年10月1日に常用漢字に取り入れられた8字削除・54字追加(計166字)字体の変更などもあった
*1990年3月1日に118字が追加(計284字)
*1997年12月3日に1字(琉)追加(計285字)
*2004年2月23日に1字(曽)追加(計286字)
*2004年6月7日に1字(獅)追加(計287字)
*2004年7月12日に3字(毘、瀧、駕)追加(計290字)
*2004年9月27日に、許容字体の205字と488字追加(計983字)
長い間300字足らずだったのに、5年前に一気に「983字」に増えました。その「983」が今年の4月30日、2文字増えて「985字」になっていたのです、しかもこっそりと!
それに気付いたのは、もう半年前になりますが、5月の新潟での新聞用語懇談会総会の前日、三省堂の辞書のサイトをのぞいていたら、「人名用漢字」に関して"驚くべきこと"が載っていました。京都大学の安岡孝一先生のコラムが載っていて、それによると、
「4月30日付で、法務省は新たに人名用漢字として『祷』『穹』の2字を認めた」
というのです。会議に出席していた80人あまりの用語委員の中でこのことを知っていたのは、新聞協会の用語コンサルタントの金武さんだけでした。プレス・リリースもされていないのです。
法務省(の大阪事務所)に確認すると、たしかにその通りでした。法務省のサイトも確認しましたが、「新たに増やした」というコメントはどこにも載っておらず、まさに「こっそりと」増やされていました。
実は「祷」に関しては異体字で"本字(正字)"の「示偏に壽」の漢字があるので、「祷」という"略字体"が人名用漢字に加わったことによって、「1字種2字体」がまた増えてしまったのです。困ったもんだ・・・。
法務省は隠そうとしてコソコソしているのですかね?
新常用漢字で増える漢字の根拠として、文化庁は「人名用漢字の字体に含まれている」というような事も言っているようですが、裁判で負けるたびにチョットずつ(あるいは一気に)増える続ける人名用漢字(人名用漢字に罪はないと思いますが)を、新しい常用漢字の根拠にするのは、本末転倒だという気がするのですが、いかがでしょうか?
「平成ことば事情1710 人名漢字」もお読み下さい。
コメント
私の『人名用漢字の新字旧字』を読んで下さってありがとうございます。
実は私は、この「祷」と「穹」の家事審判を個人的に追っかけてまして、私の日記なんかでもチョコチョコ情報をリークしてたんですよね。それで、人名用漢字への追加の1週間後に、あのコラムを載せることができたのです。
新聞がどこも載せなかったのは、かなりショッキングでしたけど、でも、法務省はちゃんとパブリックコメントもやってましたよ。
よければhttp://slashdot.jp/~yasuoka/journal/468646 やhttp://slashdot.jp/~yasuoka/journal/474543 もごらん下さい。
投稿者: 安岡孝一 日時:2009年12月01日(火) at 19:37