新・読書日記 2009_190
『訊問の罠~足利事件の真実』(菅谷利和・佐藤博史、角川ONEテーマ21:2009、9、10)
「DNA型鑑定」という最新の科学的手法を信頼するがゆえにその誤謬に気付かず、気付いたあとはその鑑定の「権威」を守るため頑なに「見ないふり」を続けた「お上」のあり方を、"権威を守るための犠牲者"として17年半を塀の中で過ごした菅谷さんと、その弁護に当たった佐藤弁護士が、二人三脚で著した警告の書。
「なぜ、菅谷さんは無実なのに自白してしまったのか?」という点について、これまで私は「警察の取調べに自白強要などの問題があったのだろう」と漠然と思っていたが、実は菅谷さん側にも、「容疑者」という異常事態の中で誰でもが陥りかねない「(人間の)弱さ」があったことなども本人の文章でわかった。また司法の側、検察の側にも、判断を下した(あるいは下さなかった)罪があることを、佐藤弁護士が暴く。え?こんな裁判官だったのか!この前の国民審査の前にこれを読んでいれば・・・というようなくだりも。
足利事件の菅谷さんの「無罪」は決まったが、それで問題が解決したわけではなく、この「冤罪」をいかに検証して「次の冤罪」を未然に防ぐかが、今後の裁判の課題であることがよくわかった。(佐藤弁護士の文章は判例の引用など、法律の専門か向けのものの引用が多くて、ちょっと難しかったですけど。)
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