新・読書日記 2009_213
『新しい「教育格差」』(増田ユリヤ、講談社現代新書:2009、6、20)
かつての学力差は「都会と田舎の差」、つまり「生活環境の地域差」が「学力の格差」になっていたが、昨今は秋田が(学力が)高くて、大阪が低い。これは都会化の波に飲まれた地域・家庭における、安定的な教育環境の解体・崩壊が影響していると、著者は述べている。
特に名指しで上がってくる「大阪府」においては「生活習慣の乱れ」が顕著に見られると。具体的には「早寝・早起き・朝ごはん」という生活習慣がなされていない。また公立高校の授業料が、大阪府は全国一高い。うーん、大阪って・・・と考え込んでしまう。
先日発表された「市町村別の学力テスト」の平均点を見ると、大阪府内でも、明らかに自治体によって(住んでいるところによって)学力差が見られた。そしてそれは生活水準の差(生活保護受給世帯の分布)と一致しているように思えたのだが。
こういったことを是正するのは、学力だけに目を向けていても根本的な解決にならない。正に「政治」の力が必要とされる分野ではないか。
その昔、1961年の中学の学力テスト(全数調査)に関する「学テ闘争」では、逮捕者が出るまでの様相を見せたそうだ。結局、「予算=金」に帰結する部分もあるが、著者が言うように、学力テストと武道館建設に100億円かけるなら、そのお金でもっとすべきことはあると思う。これも「事業仕分け」の題材か?
なお11月30日の日経新聞朝刊では、大阪大学の志水宏吉教授が1964年の学力テストの時と現在の状況を比べて、都市部と地方との間の「都鄙(とひ)格差」から、子供と地域や家族との「つながり格差」へ移行したと指摘している。一見すると、増田さんの主張と全く同じ。ちょっと説明が違ったのは、「つながり格差」というのは「持ち家率」「離婚率」「不登校率」の3つが学力に大きな影響を及ぼしている、と。すなわち「持ち家率」が高いほど、地域に住み近隣の人との付き合いが密であり(本当かな?)、近くに祖父母や親戚がいる確率も高く「つながり」が強く、また離婚や不登校の率が高いと、家庭生活の不安定さや家族関係のゆらぎがあるため、学力を上げることができない、と。当たり前っちゃあ、当たり前のことですね。ただ「不登校」は、原因ではなく結果だと思うんだけど。「学力」は、子供が勉強すれば済むというような単純な問題ではない、ということは言えますね。